保育園のキャリアパス表の作り方【モデル例つき】|等級・役職・研修・賃金を1枚につなぐ

「他の園のキャリアパス表を見てみたい」という声に応えて、4段階ステージのモデル例と作り方の手順を解説します。

投稿日:2026年8月7日

「他の園のキャリアパス表を見てみたい」「処遇改善の書類は整えたけれど、職員に見せられる表がない」。キャリアパス設計のご相談でよく伺う声です。

実は、「キャリアパス表」という正式な用語があるわけではありません。等級表、グレード表、キャリアマップ……呼び方は園それぞれで、私たちが現場でこの言葉を使うことも、耳にすることもほとんどありません。それでもこの言葉で検索する方が絶えないのは、「職員の成長の道筋がひと目で分かる1枚の表」を、名前が分からないまま探している人が多いからではないでしょうか。

本コラムでは、その1枚の表を仮に「キャリアパス表」と呼び、モデル例と作り方の手順をお伝えします。

キャリアパスという考え方そのものの整理は下記の記事で紹介しています。あわせてお読みください。


目次

1. 保育園のキャリアパス表とは、何を1枚にしたものか

キャリアパス制度の全体像は、土台とその上に乗る仕組みで捉えると分かりやすくなります。土台となるのは、園が目指す職員像のような大きな方向性です。その上に、等級(ネクサスではステージと呼んでいます)、研修、賃金、評価という各制度が積み上がります。

キャリアパス表とは、この設計を職員の目線から1枚に見える化したものです。縦に成長の段階(ステージ)を置き、横に「期待される姿」「役職との対応」「主な研修」「昇格の目安」などを並べます。これは、子どもの育ちを発達段階で捉えるのと同じ発想です。1年目、3年目、5年目と経験を積む職員が、それぞれ次にどこへ向かうのかを示します。

なぜ、わざわざ表にするのか。保育の現場では長らく、役職といえば主任くらいで、あとは横並びという「鍋蓋型」の組織構造でした。横並びの組織では、若手から見える次の目標は、はるか上の主任だけです。その高い一段は、登ろうという意欲につながりにくい。キャリアパス表を作るということは、この一段を小さく刻み直す作業です。半歩先の目標が見えれば、人は主体的にそこを目指します。

ここで、処遇改善等加算のために整えた書類を思い浮かべた方もいるかもしれません。要件対応の書類と、職員に見せる表は、似ているようで別物です。書類は行政に根拠を説明するためのもの。キャリアパス表は職員が自分の成長を思い描くためのもの。制度があっても職員に伝わっていない場合、前者しか持っていないことが多いようです。

要件側の整理は下記の記事で解説しています。あわせてお読みください。

2. キャリアパス表のモデル例|4段階ステージの基本形

先に、ひな形をお見せします。ただし、イメージをつかんでいただくための最も基本的な型です。

ステージ期待される姿役職との対応(例)主な研修(例)昇格の目安(例)
ステージ4園全体を見て、仕事ができる主任マネジメント研修評価+役割の実績+園の任用判断
ステージ3周囲の模範となって、仕事ができる副主任・専門リーダーキャリアアップ研修(4分野以上/副主任はマネジメント分野を含む)評価+研修修了+役割の実績
ステージ2自立して、仕事ができる担任・職務分野別リーダーキャリアアップ研修(担当分野)評価+研修修了+リーダー経験
ステージ1支援や指導を受けながら、仕事ができる担任(初任〜)園内研修・OJT評価と経験をもとに総合判断

このシンプルな表でも、職員は「いま自分はステージ2で、次の段に行くには何が必要か」を自分で読み取れます。役職も研修も処遇改善上の職位も、バラバラの制度ではなく、ひとつの道筋の上に並んでいることが分かります。

ただし、この表は「型」であって、ご自身の園の「らしさ」は反映されていません。とくに「期待される姿」の書きぶりは、本来、園の目指す職員像から書き起こす部分です。他園の表を持ってきても合わないのは、土台となる考え方や理想とする保育が園ごとに違うからです。型は借りても、中身は自園で考える。これが、園らしい人材を育てるキャリアパスづくりの要です。

3. キャリアパス表の作り方【4つの手順】

❶ 目指す職員像を言葉にする
すべての土台です。「皆さんの園では、どういう保育者を目指すのか」。理念や保育へのこだわりを、覚えられる長さの言葉にします。禁止事項の羅列ではなく、前向きな決意表明として書くのがコツです。

❷ 段数とラベルを決める
何段階にするかは、各段階の人材イメージを言葉にできるかで決まります。モデル例のように「支援を受けながら」「自立して」「模範となって」「全体を見て」と、段ごとの違いがはっきり言えるなら適切な段数です。4段目と5段目の違いが説明できないなら、分けすぎです。

このとき、いまは該当者がいない等級をあらかじめ置いておく方法があります。たとえば「統括主任」のような未来のポジションです。組織の成長のたびに表を作り直すのではなく、先に階段を用意しておく。そうすれば、いま上の段にいる職員にも次の目標が生まれます。

等級設計そのものを詳しく検討したい場合は、下記の記事も参考になります。

❸ 役職と処遇をひもづける
職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任保育士といった処遇改善上の職位を、どの段に対応させるかを決めます。ここがつながると、「なぜあの人が副主任なのか」に制度としての説明がつき、昇給や手当の根拠も一本の線になります。

❹ 研修と昇格の目安を書き入れる
段ごとに、どんな学びの機会を用意するかを計画します。「たまたま研修があるから」ではなく、「次の段に向けてこれを学ぶ」という順番です。また、昇格の目安は、単一の条件にしないことをお勧めします。たとえばフィギュアスケートの採点が複数の要素で決まるように、評価・研修の修了・役割の経験などを組み合わせて総合的に判断する形が、実態に合います。

4. 自園らしい表にする2つの工夫|専門職ルートと役職名

基本形ができたら、自園らしさを加えましょう。

ひとつは、枝分かれの道です。ステップアップは管理職への一本道である必要はありません。マネジメントの道と並んで、専門性を磨く道を用意する。障害児保育や食育など、専門分野の枝を表に描くと、「主任になりたいわけではない」中堅職員にもスキルアップの道筋が見えます。

もうひとつは、呼び名の工夫です。「職務分野別リーダー」ではピンとこなくても、「絵本リーダー」なら目標にしやすくなります。実際、絵本専門士という、保育士に人気の資格があります。資格を取りなさいと言われなくても、魅力的な目標があれば、人は自分から動きます。表に載せる役職名を園らしい言葉に変えるだけでも、制度への愛着は変わります。

5. キャリアパス表づくりでありがちな4つの失敗

表づくりでつまずく園には、共通のパターンがあります。

  • 細かく分けすぎる。段の違いを説明できない表は、運用で必ず崩れます
  • 他園の表をそのまま使う。目指す保育が違うので、期待の言葉が職員に刺さりません
  • 年功で運用する。表の基準は期待される能力と役割です。「何年いたか」で昇格させた瞬間、表は絵に描いた餅になります
  • 作って終わりにする。配られただけの表は忘れられます。次章のとおり、現場で共有するところまでが表づくりです

6. 作ったキャリアパス表を職員全員で共有する

最後の仕上げは共有です。

私たちがお勧めしているのは、決めた制度を手帳のような形に整理し、全職員がいつでも見られるようにすることです。表は、面談で成長を話し合うときの共通言語になり、評価の基準になり、研修計画の根拠になります。

一般企業の採用セミナーでは、新卒学生に「うちの会社に入ったら」とキャリアパスが語られます。先々がイメージできる職場は、それだけで選ばれる理由になります。逆に、先の見えない職場は不安でしかありません。表を1枚作って終わりではなく、採用の場で、面談の場で、繰り返し語る。そこまで含めて、キャリアパス表は機能します。


よくある質問

保育園のキャリアパス表の見本はありますか

本コラムのモデル例(4段階ステージの表)はシンプルな基本形です。自治体などが公開している保育士キャリアパスの資料も参考になりますが、「期待される姿」の言葉は園の職員像から書き起こす部分なので、見本はあくまで型として使い、中身は自園で作ることをお勧めします。

キャリアパス表は何段階にするのがよいですか

園の規模により異なりますが、実際には5〜6段になる園が多くあります。本コラムのモデル例を4段にしたのは、構造をつかみやすくするためです。大切なのは数ではなく、各段階の人材イメージを言葉で説明できるかどうかです。説明できない段は、分けすぎのサインです。

保育士以外の職種(栄養士・看護師・調理員など)も同じ表に載せますか

ステージの段階(支援を受けながら/自立して/模範となって)は職種共通で使えます。一方、「期待される姿」の中身と研修は職種で変わるため、共通のステージに職種別の期待を書き分ける形が実務的です。

小規模な園にもキャリアパス表は必要ですか

規模の問題ではなく、職員に成長の道筋が見えているかの問題です。小規模園なら段数は少なくて構いません。むしろ職員数が少ないほど、一人ひとりの「次の目標」が組織の力に直結します。小さく作って、育てながら整える形で十分です。


まとめ|表づくりは、道筋の見える化

今回はキャリアパス表の作り方をお伝えしました。

呼び方は、キャリアパス表でもキャリアマップでも何でも構いません。大切なのは、職員が自分の成長の道筋を、自分の言葉で語れるようになることです。1枚の表は、そのための道具です。ご自身の園の「表」が職員にどう見えているか、この機会に確かめてみてください。

執筆:杉村基樹(株式会社ネクサス代表取締役)



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