副主任保育士・副主幹保育教諭ってどんな役割?|保育園のリーダーとは

副主任保育士,役割,副主幹保育教諭

投稿日:2022年11月16日

キャリアアップ研修の制度が始まって、保育園では「副主任」、認定こども園では「副主幹」という役割を新しく設けたという園は多いのではないでしょうか。しかし同時に、任命したものの、その役割の定義づけは明確ではないという園が多いのも事実です。副主任に任命されたら具体的に何をすればいいのか、任命される前とどう違うのか、本人に伝えることはもちろん園全体で共通認識を図るべきです。

保育園における役割定義は「園による」という側面が強く、一概に「副主任とはこういうものです」とは言えないものですが、今回は、一般的な役割定義についてご紹介します。

目次

保育園の役職の役割定義の目的

保育園ではほんの数年前まで、役職といえば園長と主任保育士だけ、他は全員一般職員というのが大半でした。それはそれで指示系統が一本化されてわかりやすいというメリットがありますが、職員数の増加や働き方・勤務形態の多様化によって、園長と主任だけで全職員を管理することは難しいと感じている園も増えてきました。職員数の多い園では、リーダーという役職を設けているところが多いですが、基本的には担任を持ちながらクラスや幼児(乳児)のまとめ役を担っている、いわゆるプレイングマネージャーという場合がほとんどで、明確な役割定義が為されていないのが事実です。

そもそも、保育園において役割を明確に定義する必要があるのはなぜでしょうか。

組織は所属するすべての職員が一丸となって同じ目標を目指します。保育園の究極の目標は理念です。理念は一人ひとりがバラバラに目標を目指すのでは決して到達できないものであり、全員が同じ仕事に取り組んでも到達できないものです。それは例えば行事一つをとっても同じでしょう。行事を成功させるには、必要となる仕事の全体像を把握し役割分担を行います。一人ひとりが自分の役割を全うし協働することで初めて行事を成し遂げられるのです。保育園という組織に置き換えると、役割分担は役職の任命にあたります。

役職には、組織から期待される役割があります。全うしてほしい任務、果たして欲しい責任です。つまり役割定義とは、保育園としてその役職に期待する役割を明文化することです。これが曖昧なままだと、その役職の仕事は属人的なものになってしまいます。
これはその役職に任命される本人が役割を自覚して仕事に取り組むためにも必要であると同時に、全職員がその役職の人にどう接するべきかを示すことにもなります。もし指示系統が曖昧で報連相すべき相手に迷う、全員がなんでも最初に主任に相談する、という実態があるようなら要注意です。

職員数の多い園ほど役割を明文化する効果が期待できます。組織図のようにわかりやすく可視化するのもいいでしょう。

副主任保育士の役割とは

副主任保育士の話の前に、主任保育士について考えてみましょう。同じ主任保育士でも、園によって役割は大きく異なります。日常の保育に入ることが多いような現場寄りの主任もいれば、基本的に事務室に常駐しているような管理職寄りの主任もいます。それは園の規模や職員の層、これまでの歴史によって違います。ですから、役割定義は園ごとに考えるべきものであり、違って当たり前のものです。

ここでは、クラス担任も兼任している副主任保育士を想定して役割を見ていきます。クラス担任・いち保育士としての役割と、副主任という役職における役割を切り分けて考えましょう。

役割定義の例

  • 主任保育士の補佐
  • 主任保育士が不在時の代理
  • 園全体の人材育成の実質的な指導役
  • チームにおいて共通目標を浸透させる
  • チームの問題解決を推進する
  • チーム間の調整役
  • 実習生の指導役

専門リーダー、職務分野別リーダーとのちがい

副主任保育士はライン職と呼ばれます。園長から主任が受けた指示をチームの職員に伝えていくパイプ役です。同時に現場の声を管理職へ伝えることもあります。もちろん専門分野の知識や技術も一定以上求められますが、管理職のスキルも必要になるゼネラリストです。自分の保育だけでなく、チームの保育、園全体の保育と広い視野を持つことが求められ、調整や後輩育成が期待されます。

一方で専門リーダーはスタッフ職と呼ばれます。専門分野を極めてスペシャリストのプレイヤーとして活躍していく職員といえます。この分野のことはこの人に聞けばなんでもわかる、この人に任せれば大丈夫と周囲から思われるような、高い専門スキルを持ち、常に磨き続けることが求められます。さらに、その分野について園全体の資質向上や後輩育成をすることが期待されます。それがやがて園の保育の特色といえるまで高められることが理想です。

職務分野別リーダーは自身のキャリアを考え、やがてライン職かスタッフ職を選ぶ前の段階といえるでしょう。それまでに専門スキルを高めることが求められます。保育士としての自分のキャリアを自分で描き選ぶために、さまざまな経験とチャレンジを重ねる期間と捉えると良いでしょう。

副主任保育士の仕事内容

仕事内容とは、役割を果たすための具体的な業務のことです。作業的に与えられるものではなく、任命された役割を果たすためにはどんな仕事をすればいいのだろう、役割に付随してどんな業務が必要だろう、と行動レベルに落とし込んだものが理想です。

ここでは、先述の役割定義の例と連動して仕事内容を見ていきます。役職における仕事内容は、それを考えるのもそのポジションについた人の仕事と言えます。

仕事内容の例

  • 主任と意思疎通を図り、主任の業務内容を把握する
  • 専門分野とマネジメントにおける知識と技術を身につける
  • 園全体の年間研修計画を立てる
  • 園の目標につながるチームの目標を設定しチームに達成を促す
  • チームの現状分析をし問題点と解決策を提案する
  • 他チームの現状を把握し園全体で協力する体制を作る
  • 実習生の受け入れマニュアルを整備する

副主任保育士が身につけたいスキル

処遇改善加算Ⅱでは副主任保育士として任命する際の要素としてキャリアアップ研修の研修修了要件が挙げられていますが、「マネジメント+3つ以上の分野の専門研修を修了すること」とあります。ライン職として位置付けられているため、マネジメントの学びが欠かせないということです。

キャリアアップ研修におけるマネジメント分野

マネジメント分野の学びのねらいは、主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う立場に求められる役割と知識を理解し、自園の円滑な運営と保育の質を高めるために必要なマネジメント・リーダーシップの能力を身につけることとされています。プレイングマネージャーが多い副主任保育士ですが、自分のクラスやチームの保育だけでなく、園全体の運営を自分ごととして捉えることが求められているのです。その視点を持つことができれば、保育現場を円滑に運営するために管理職に要望することができたり、園が現場に求めることを噛み砕いて職員に伝えることができたりするでしょう。

主な研修の内容は以下の通りです。

  • マネジメントの理解
  • リーダーシップ
  • 組織目標の設定
  • 人材育成
  • 働きやすい職場づくり

マネジメントスキルを伸ばすためには、キャリアアップ研修の学びだけでは不十分でしょう。保育業界でもマネジメント関連の研修が増えてきましたが、どの業界でも必要な能力であるため一般企業向けの研修参加も選択肢に入れるとより広く学びの機会を得ることができるでしょう。ただし、マネジメントスキルは実践も重要です。知識を身につけた上で後輩指導やチーム運営を経験することで高いスキルアップが期待できます。

副主任保育士をどう決めるべきか

副主任保育士を任命する際、あなたの園では誰をどのように選んだでしょうか。多くの園がそうであるように、経験年数や年齢、これまでの役職を鑑みて選ぶのが妥当な選び方だと言えるでしょう。
ただし、役職とは組織として任命するものですから、年功序列などの順番に役職をつけるだけでなく、適材適所、抜擢という人事があっても良いと思います。
副主任保育士という役職の役割定義・仕事内容が明確になった前提で、ここでは、副主任の任命のポイントについてお話しします。

任命要件を明文化する

本人にとっても周囲にとっても納得のいく人事を行うためには、要件を明確にしておくことが重要です。これも副主任保育士に限ったことではありませんが、役職の任命要件を定めておきましょう。先に役割が明確になっていれば要件を考えるのもそう難しくはないでしょう。任命要件の要素としては、経験年数、後輩育成の経験の有無、クラスリーダーやプロジェクトリーダーなどのマネジメント経験の有無、能力評価の結果、研修受講歴、資格、試験などが考えられます。複数の要素を組み合わせることで、リーダー的職員を計画的に育成していく上での手掛かりにもなります。
職員にとっても、「このような経験を積むと自園では副主任に選ばれるんだな」「副主任になるためにはこのような経験が必要なんだな」と自身のキャリアを描く上での指標になります。

評価の体制を整える

期待される役割に応えられる人材かどうか、経験だけでなく能力で判断するためには能力評価も欠かせません。同じ経験年数の職員が複数いて一人だけ任命するという時には、その中でも最も相応しい人を選ぶはずです。その「相応しい」を見極めるために評価が役立つのです。
また、任命した後にもその役割を果たせたか評価する必要があります。保育という仕事は成果が見えないため評価することは難しいと言われますが、役割には成果が求められます。名ばかり役職とならないためにも、その職責を果たせたかどうかをチェックする体制を作りましょう。それがあることで職員から見た人事への納得性、役職に対する信頼感が高まります。

本人と役割の意味づけを行う

役職は組織を円滑に運営するために必要なものであり園から任命するものではありますが、任命される本人の意思も重要です。本音をいえば、やりたくないのに任命された人が園から期待される役割を果たせるかどうかは疑問です。ではやりたいという人しか選んではいけないのかというとそれも違います。保育士はリーダーになりたがらないともよく言われますが、そのポジションへの期待やモチベーションを高めていくのも組織・管理者の仕事です。
「あなたに副主任保育士を任せたい」という組織側の理由や管理者の期待を伝えた上で、本人の気持ちを聞き不安があれば取り除く必要があります。人によっては話し合いを重ねることも必要でしょう。それでも「やりたくない」という気持ちが強い方であれば無理に任命することはありません。その人が引き受けなければ誰もやる人がいない、という状況だとすればそれ自体が組織の課題です。そうならないために、次世代のリーダーを「層」で育成することに取り組みましょう。
任命される本人が、園の目標を達成しよう、チームのために副主任の仕事を全うしようという意思を持てるよう、副主任保育士の役割に対する有意味感を高めましょう。

役職は毎年変化しても良いものです。一度役職についたらずっとその役職であり続けなければならないわけではありません。その年の園の体制や人員配置などによって、柔軟に任命することでマンネリ化や人事の硬直化を防ぎ組織を活性化させることができます。

園内に副主任保育士に対する共通認識を

副主任保育士・副主幹保育教諭という役職を題材に、保育園における役割定義について見てきました。現在、役割や担う仕事が曖昧になっている、他の役職との違いが不明確、役割を伝えて任命したけれど思ったように役割が果たされていない、などの課題がある場合は、改めて定義づけすることをおすすめします。その際には、「これまでこうだった」を一旦置いておいて「今後どうあったら良いか」を基準に考えると良いでしょう。もちろん他の役職の役割定義についても同様です。

そして一番大切なことは、明確にした役割定義を全職員に共有することです。役職に対する共通認識を持って初めて、その役割の人は自分の力を組織のために発揮できるでしょう。任命された本人が役割を自覚しチームのために働きかけること、チームの職員がその働きかけに応えて協働すること、それが組織としての保育園を活性化させることにつながります。


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