保育園のリーダー育成がなぜ大切なのか|任せられるリーダーの存在がチームを強くする

経験と能力に優れた保育士をリーダーに任命したら、「なぜ私がリーダーなんですか!?」と不満を口にされたことはありませんか?あるいは、その保育を後輩にも伝えてほしいと考えてリーダーを任せたのに、自分でやったほうが早いとリーダー自身が全て手を下してしまうということは?

頼れるリーダーの育成はなかなか簡単ではありません。

組織が大きければ大きいほど、自ら考えて動けるリーダーの存在は重要です。さらに職場を取り巻く環境の複雑化により、以前にも増してミドルリーダー育成の重要性が叫ばれています。
昨今、保育分野の処遇改善と連動するかたちでキャリアアップ研修が実施され、研修分野の一つとしてマネジメントが取り入れられるようになりました。しかしながら優れた保育士が頼れるリーダーに成長するためにはキャリアアップ研修の受講だけでは不十分であり、かといってリーダーの主体的な学習に任せるのも本人の負担が大きいでしょう。

目次

名選手必ずしも名監督にあらず!優れた保育者が頼れるリーダーとして活躍するために必要なこと


昔から言われているように、名選手が必ずしも名監督や名コーチになれるとは限りません。保育士として優秀だからといって、リーダーとしてチームを上手にまとめたり、上手に指導したりできるわけではありません。

その理由は、保育に必要なスキルとマネジメントで発揮されるスキルは種類の異なる能力だからです。

上司は、優れた保育士は後輩も上手に指導できるだろう、チームをまとめられるだろうと考えてしまいがちですが、保育スキルとマネジメントスキルは異質の能力のため簡単にはいかないのです。

上司が誰にリーダーを任せようかと考えるときに、「向き・不向き」、のような感覚で決めることが多いようですが、本人はマネジメントスキルを学習する機会もないまま、いきなりリーダーを任せられます。もしかしたら、こちらの身にもなって欲しい…そう思っているかも知れません。

実際に、リーダーとして期待される役割を全うするためには、それなりの準備が必要です。見方を変えると、多少向き不向きがあるにせよ、きちんと準備をすることができれば誰でもそれなりにリーダーの役割を担えるはずです。

保育園のリーダー育成における問題あれこれ。そもそもリーダーって何をする人?

リーダーシップに対する誤解

人の上に立ってチームを引っ張る。
的確に指示を出しチームを率いる。

従来のリーダーのイメージはこうではないでしょうか。しかし、価値観の多様化した現代では、このような「統率型」のリーダー像よりも、個々の職員のアイデアや連携を引き出す「協調型」のリーダーの重要性が増していて、ステレオタイプな古いリーダー像は通用しなくなっています。このような古いリーダー像が、多少なりとも「私はリーダーに向いていない」という職員の意識につながっていることは否定できません。

リーダーの役割が曖昧

「○○さん、来年からリーダーを任せるからよろしく!」と期待を込めて伝えたものの、リーダーとはどんな役割かを上司は具体的な言葉で説明できるでしょうか?どのような役割行動が期待されるのでしょう。
一口にリーダーと言っても解釈は人によって違います。もしきちんと役割を伝えたことがないなと思われたなら、園におけるリーダーの役割を整理してみると良いでしょう。期待が曖昧だと期待に応えられません。認識のギャップも生まれやすくなります。

また、近年ではクラスリーダーや以上児未満児のリーダーのようなどの園にもあるようなリーダーに加え、処遇改善Ⅱにおける専門リーダーや職務分野別リーダーのような言葉も聞かれるようになり、それぞれ定義が曖昧だったり形骸化したりしています。
役割に対して前向きに取り組むためにも、組織としての公式な任命職員自身が役割を理解できるような説明と意識付けが必要です。

マネジメントの学習機会が少ない

処遇改善Ⅱにおけるキャリアアップ研修の8分野の一つにマネジメントが設けられるなど、ミドルリーダー育成の重要性については広く認知されるようになりました。しかしながら、リーダーとして学習しておきたいテーマは多岐にわたり、キャリアアップ研修の15時間だけで身につくものではありません。

マネジメントスキルは実践を通じて身につくものです。だからといってリーダーを任されたら学べばいいということではなく、後輩を持つようになったら少しずつ学習と経験を積み重ねてウォームアップしていくことでいざという時の準備も整います。

リーダーに「向いてない」という意味の半分は、マネジメントが「できない」というより「知らないから不安」だと言っていいでしょう。
優れた保育士が頼れるリーダーとして今後も職場で活躍してもらいたいのであれば、専門性の向上のための学びは当然として、マネジメントスキルの向上についても意識的に学習機会を設けていくことが大切です。

上司がリーダーに任せられない

リーダーを任せたのはいいけれど、不安から口や手を出すことが続いたり、自分のやり方でないと気が済まないために行動まで管理しすぎたりすると相手は依存的になります。結果、リーダーは上司の指示をこなすだけの役割になってしまいます。こうなると本人にとってやりがいも成長実感もないでしょう。

経験に基づいているとは言え、上司のやり方が100%正しいとは限りません。人の強みや持ち味を活かすことを考えるのであれば、任せて見守ることも必要です。ただし、任せると丸投げは違います。リーダーが成長できるように伴走するのが上司の役割であり、プロセスに関わることが大切です。

リーダーのロールモデルが不在

例えば保育園のリーダーたちが皆、辛く苦しそうにしていたらどう感じますか?
リーダーたちを上司がサポートしなかったらどう見えますか?
誰もリーダーになりたいとは思えません。

反対に、イキイキとした姿で活躍するリーダーの存在があれば目標にもなりますし、前向きな気持ちでキャリアアップに取り組む職員も増えるはずです。
子どもが年上の子どもに憧れの気持ちを持つように、身近で魅力的なリーダーの姿があれば自分もやってみようという気持ちにも繋がります。

リーダー育成の重要性とは。頼れるリーダーの存在がチームを強くする

保育時間が長時間化し、就労形態も複雑化、多様化しています。それに伴い管理すべき人や事が増えているのに、マネジメントがそれに追いついていないのが保育現場。
もちろん、事業規模に合わせて管理体制を進化させている組織もありますが、今まで園長の強いリーダーシップで職員をまとめてきた組織ほど、リーダーが育たないという問題を抱えていたりするものです。上司の判断や指示に依存してきた職場では、職員が自分で判断したり創造したりする経験が不足していますから、いきなり何かを任せるといわれても不安になるのは当然です。つまり慣れていないということです。

マネジメント理論で、「統制範囲の限界」という考え方があります。
これは一人のリーダーが管理出来る部下の数は7名程度が限界で、それを越えると著しく管理能力が低下するというもの。これを保育園というチームに当てはめて考えてみると園長と主任だけでマネジメントが回らないのは明らかであり、チームで協働し、保育の質を向上させていくためには組織の規模や成長過程に応じてマネジメント体制も変化させる必要があります。

保育園のリーダーに必要な能力とは?保育のスキルとマネジメントスキルは別の種類の能力

マネジメントにおいて求められる能力は多岐にわたりますが、保育はチームワークであり、それが人との関係をベースに成り立っていることを考えると、第一に、人に関心を持ち相手の話を「聴く」ことはとても大切です。
関わる相手がどんな考えを持っているのか。何が得意で何が苦手なのか。それは指示命令のような一方的なコミュニケーションでは知ることができません。

質の高い保育を行うために子どもの育ちをよく知ろうとするのと同様、マネジメントは職員一人一人に関心を寄せ、どうすれば成長できるか、より活躍できるか、相手の特性を理解しようとすることがより良いマネジメントにつながります。

さらに、次のようなテーマについて学びを深めることがマネジメントスキルの向上に役立ちます。

  • 組織理解
  • コーチングスキル
  • OJT
  • 動機づけ
  • チームワーク
  • ファシリテーション
  • メンタルヘルス
  • 感情コントロール
  • 問題解決  ……等

どれも大切なものですが、全ての知識を一度に身につけるのは現実的ではないので、一つ一つスモールステップで学習することを考えます。OJTなどは子どもの保育と考え方が似ているところもあるので、理屈がわかれば一般企業のリーダーよりも理解が早いはずです。

職員の成長段階に合わせたキャリアパスを考え、保育の専門性の向上に加えて、マネジメント力の向上についても段階的に習得できるような計画を立てておくことが必要です。

保育園におけるリーダー育成はどうする?中長期的な視点で計画的にリーダーを育てることが大切。

これまで保育園では、保育士がある程度経験を積むと、いきなりリーダーを任せることが多かったようです。任せられた職員は、リーダーって何をすればいいの?私、リーダーなんて向いてない!と感じてしまったり、反対に力が入りすぎて空回りしてしまったりするなんて話も聞こえてきます。

繰り返し述べているようにリーダーとしての知識やスキルは、保育スキルとは種類が異なるものであり、一朝一夕で身につくものでもありません。

上司から見て良い保育をしてくれていると思う職員にリーダーとしても活躍して欲しい、その優れた保育技術を後輩たちにも教えて欲しい…そう思うのであれば、そうなれるような環境を整えることが大切ではないでしょうか。

そこで、以下の点について考えてみて下さい。

リーダーになるまでのキャリアパスを考える

保育士が経験を積み、頼れるリーダーとして成長するまでのキャリアパスを考えてみてください。

どのような学びや経験を積み重ねていくことが成長に必要なのか。職員が成長できるような学習機会を設けるなど、組織としてどんな支援ができるかも合わせて考えてみてください。

スモールステップで学びながら、いざという時に心の準備が整うようにします。

リーダーは「チーム」で育成する

リーダーは「リーダー層」としての育成を考えます。

個人にフォーカスしてリーダー育成を行うのではなく、経験やスキルの似かよった複数名の人材をリーダー層として育成するこということです。

保育園という職場の特性上、ライフイベントによる退職や休業も多いですし、個に頼りすぎているといざという時に困ります。また、同じ立場で学ぶメンバーがいることは心強く、結束も生まれるでしょう。

さいごに

今回はリーダー育成についてお伝えしました。

頼れるリーダーの存在が何倍にも強くします。それに異論はありません。しかし、リーダーになることばかりが保育士のキャリアパスではないこともたしかです。高度な専門性を活かすキャリアパスがあってもいいでしょう。そのような人材も保育園には必要です。
とはいえ、リーダーの役割を担うかどうかは別として、マネジメントについて学んだ人材が園内に多くいたほう方が、リーダーをサポートする職場風土が生まれるのではないでしょうか?

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