保育園の職員面談の進め方|園長が知っておきたい保育士が育つ面談のポイント

保育士の面談,保育園の面談

投稿日:2022年8月31日

今回は、保育園で実施する職員面談について、人材育成の観点から見ていきたいと思います。

目次

保育園の職員面談の種類

面談とは組織と面談相手の相互理解を深め、意見や方向性のすり合わせを行うために設けるコミュニケーションの場です。保育は個人で行うものではなく、組織一体となって利用者・子どもたちに提供していくものですから職員間のコミュニケーションが非常に重要であることは間違いありません。

しかしながら多くの保育園において意義ある面談が実施できていない、または面談自体行っていないことも多いのが事実です。その理由は「時間が作れない」ことでしょう。人材不足が叫ばれ目の前の保育が優先の保育園では、忙しくて時間がないのは理解できますが、イコール、面談をできなくても仕方ないということにはなりません。職員への面談を疎かにすることは、モチベーションの低下を招くなど、退職にもつながりやすいということもまた事実だからです。人材不足だから優秀な職員の離職はできれば避けたい、そして既存職員のスキルアップを図って様々な業務を担ってもらいたい、そう考えるのであれば、まず面談を実施することをオススメします。

面談にも種類がありますので、面談の意義を正しく理解し、その面談の進め方を理解することで、効率的・効果的な面談を実施しましょう。

目標設定面談

目標管理を導入している場合に、職員一人ひとりが設定した目標を上司と確認・決定するための面談。

1年間(または半期)の個人目標を設定し、どのくらいの数値を目指すのか(定量目標)、どのような状態を目指すのか(定性目標)を双方ですり合わせを行う面談。売上〇〇万円のように数値目標を作りづらい保育施設では定性目標であることが多いので、具体的にどのような状態になったら達成したと言えるのか、達成基準なども事前にすり合わせをすることが重要です。

目標管理では、職員一人ひとりの目標設定力を高めることが必要ですが、この面談では、上司側が一人ひとりが相応しい目標を設定できるよう導いたり考えさせたりする力が必要になります。

育成面談

その名の通り、職員の育成に主眼をおいた面談。

具体的には、年度始めに設定した目標の進捗状況を確認し、最近の業務で課題を感じていることがあれば話を聞き、次の行動や解決への道を気づかせるための面談です。半期には能力・行動評価などの振り返りを行う場とすることもあります。目標を相互理解している必要があるため、目標設定面談を行った上司が育成面談を行うのがベターです。

評価面談

1年または半期を振り返り、上司から部下へ評価結果をフィードバックするための面談。

上司からはなぜこういう評価なのかを部下に伝え、部下はその評価に対し意見はないかをすり合わせます。フィードバックは、まず上司の評価を伝える場合と、最終的な評価が確定してから伝える場合の2つがありますが、保育園の場合は前者の方が多いようです。この場合、自己評価と上司評価をすり合わせた結果、評価が変わることもあり得ます。

この面談では、評価結果を伝えて終わりではなく、翌年の目標や課題を検討し、それに向かって上司も並走していく姿勢を伝えることが重要です。

面談者が意識すべきこと

面談で一番重要なことは「職員の気持ちがスッキリしたり、納得感をもったり、次のチャレンジに行動していこうとする意欲が面談後に感じられるかどうか」です。簡単に言えば、「話して良かった!」と思ってもらえるかどうかです。そのためには面談を実施する組織(上司)として以下の3つの目的を持って実施しましょう。

職員が自走できるように育成する

面談では職員に内省を促していくことで職員自身の力・判断で課題を特定し、解決できる状態(自走)に近づけていくことができます。例えば「とある職員が目標を立てて1年をスタートしたが、職員自身が何かしらの「壁」を感じている様子で、行動がどんどん鈍化していることに気づいた」。そんな時は、「あなたは何に壁を感じていて、どうしたらその壁を越えることができそうか?」を面談者からの問いかけを通じて職員に内省を促し、次への行動を後押ししてあげることも必要です。

普段の仕事の中でもPDCAサイクルを意識して反省を行うことは多いと思いますが、職員一人ひとりにそのサイクルを根付かせるために、客観的な立場からの視点や気づきが有効です。答えを出して行動するのはあくまで本人ですが、そのサポートやフォローは人材育成の一環です。

職員一人ひとりの声を吸い上げる

普段はなかなか言えない悩みや不満は誰でも1つくらいはあるもの。それを話す場があることで上司と職員の信頼関係構築や職員の心理的安全性*を担保することができます。「話したいけど、話す勇気がない」「いつも上司は忙しそうで話しかけるタイミングがない」と感じている職員は少なからずいます。

面談を機に職員のことを色々と知る機会にしたり、話をしていくと意外な一面が見えてきたりと、普段の業務内だけでは中々取れない1対1のコミュニケーションが取れることは上司にとっても非常に大きなメリットであると言えます。ただ気をつけたいのは、上司のための時間にしないことです。上司側が知りたいことを一方的に質問したり、指導やアドバイスを伝えるだけになったりしては面談の意味がありません。「職員一人ひとりの声を聴く」という目的を忘れないようにしたいものです。

*心理的安全性とは、職員がチームにおいて、本来の自分をさらけ出すことができたり、思っていることを遠慮せず発言できると感じられるような状態を指す言葉

期末のネガティブなサプライズを防ぐ

定期的な面談やフィードバックがなく、普段注意されることもほとんどないので、職員自身は問題なく仕事がうまくいっていると思っていた。しかしいざ年度末の面談になったら、思ったより低い評価を上司から伝えられモチベーションが下がってしまった。その職員は「自分の仕事の仕方や考え方に問題があったのなら、もっと早く言って欲しかった…」と落ち込んだ。

よくある事例です。普段の仕事ぶりを上司がすべて見ていられるかというとそうではありませんよね。特に、園長が一人で全職員の状況を把握するのは無理があります。だからこそ、じっくり1対1で話す機会を持ってその職員が仕事に対してどんな姿勢で臨んでいるのか、プライベートも含めて困っていることはないか、相談できる人はいるのか、その人自身のことを気に掛けることが重要です。全職員の話を聞くことで園内の人間関係を把握することもできます。

ネガティブなサプライズの最たる例は「急な退職報告」です。何の前触れもなく急に「私、辞めます」となってしまうと、もはや手遅れです。相談しやすい環境作り、話しやすい人間関係作りを構築するために、定期的な面談の機会が非常に有効です。

職員面談のポイント

準備編

忙しい現場だからこそ、保育園の面談は事前準備が大切です。これまでどれだけ準備ができていたか、これから実施するにあたってできることはないか、チェックしてみましょう。

  • 面談を年間行事にする
  • 面談の目的・内容の共通認識を図る
  • 面談の環境設定をする

面談を年間行事にする

今日時間が取れそうだから今から面談しよう!という行き当たりばったりではなく、計画的に実施することが重要です。年間の行事予定を年度初めに発表するように、面談を人事の行事として年間の予定に組み込みましょう。毎年この時期には必ず全職員に面談がある、と園内で決まっていれば、職員側としては「面談の時にこれを話そう」と心の準備ができますし上司側としても面談が後回しになることが少なくなります。
できれば、実施したい面談の目的に合わせて、誰が誰の面談をいつ実施するのが効果的なのかを考えた上でスケジュールに落とし込めるのが理想的です。目的によっては全ての面談を園長一人で実施する必要はありません。

面談の目的・内容の共通認識を図る

最初に面談の目的を明確にしておきます。職員のモチベーションを上げるために実施するのか、職員の成長を支援するための育成面談なのか、メンタルヘルスを保つためのカウンセリング的な面談なのか、次年度の働き方や進退確認をする場なのか、目的を混同しないことが重要です。面談の機会がなかなか取れないからと、一度の面談にいろいろな目的を持って臨む保育園が多いようですが、できれば1回の面談には1つの目的で臨みましょう。「結局、何の面談だったんだっけ」「話が広がりすぎて収拾がつかなくなってしまった」「いろいろと話したけどモヤモヤが残った」というような面談は、欲張り過ぎた結果かもしれません。
面談の目的は、面談者が複数人いる場合は面談者間でぶれないよう共通認識を図っている必要があります。もちろん面談を受ける側の職員にもはっきり伝えておきましょう。双方がそのつもりで面談に臨まなければ、良い効果は得られません。その上で、職員には事前に話したい内容を考えてきてもらったり、面談シートを準備して書いてきてもらったりすると良いでしょう。面談者側も、目標や評価結果の確認、気になっている点、今後の課題など、面談で話し合いたいことを整理して面談の進め方をイメージしておけば、より濃い面談が実施できるでしょう。初めて面談をする職員や課題が大きいと感じている職員との面談の前には特に念入りな準備が必要です。

面談の環境設定をする

面談は実施する場所も重要です。集中して話ができる場所を選びましょう。面談用の個室がないという園では工夫が必要です。個室だけど隣の部屋の声が聞こえる、電話や呼び出しなどが面談途中にあるかもしれない、など気が散る要素は排除し、じっくり落ち着いて進められるよう、緊急連絡以外はシャットアウトするようにしましょう。カフェや貸し会議室など、園外で面談を実施する園もあります。
面談の実施時間は、目的や内容にもよりますが、30分〜1時間程度が望ましいでしょう。1時間以上かかる場合は、目的が混在している可能性が高いので、別日に仕切り直すことを検討します。逆に30分以下で終わってしまう場合は準備が足りないと言えます。

実施編

まずは職員が余計な緊張感を持たず話しやすいような和やかな雰囲気をつくることが重要です。
面談の最初に、改めて面談の目的、進め方、予定時間などを伝えます。本を読む際の目次をイメージすると良いでしょう。お互いの認識がずれてないことを確認してから話し始めます。

基本的に職員の育成を目的とした面談では職員に話をしてもらうことが重要ですから、上司(面談者)は聞き役に徹する必要があります。質問しなくても色々と話してくれる職員、質問しても話が続かない職員など、職員にも様々なタイプの方がいらっしゃると思いますが、下記の内容で面談を進めるとシンプルなのでオススメです。

①目標の進捗確認(目標設定してなければ、最近の仕事の近況)
例)◯◯を目標にしてたけど順調?、最近どう?など

②うまくいっていることとその理由
例)最近うまくいっていることや楽しいことはある?、どんな理由でうまくいっている?など

③うまくいっていない事や課題を感じている事とその解決方法
例)◯○の目標がうまく言っていないようだけど、何か自分で解決法はある?、何か手伝えることはある?など

④その他、体調面や家族のことなど相談したい事
仕事のことだけでなく、その人自身に関心を持ちましょう。人は何か気がかりなことあると仕事にも集中できません。プライベートに干渉するということではなく、その人の状況を知り必要な時はサポートするよという姿勢を見せることが大切です。

先にも述べたように面談は職員への内省を促す場ですから、基本的には職員の声を聴くことが大切です。よって途中で話を遮ったり、否定したりするのはNGです。うまくいっていないことも、もしかしたら職員自身で何かしらの解決法を考えているかもしれません。上司から一方的に「あなたはこういうところを直した方がいい」「あれがダメ、これがダメ」と話すことはNGです。もしそう言ったことを職員に伝えたい場合は「あなたにはこういうことを期待している」と期待を込めたメッセージに変換して伝えましょう。

面談の最後は、話の内容を整理し行動を促す形で終えるようにします。うまくいっていないことがあるとして、それをどう改善するのか、その場でこうしようと思います、という解決策が出るのであれば「じゃあそれでやってみようか」と背中を押し、もしその場で出ないのであれば、「じゃあ、いついつまでに考えてまた聞かせてくれる?」と考えるという行動につなげます。もちろんその後の確認が必要です。どちらの場合も、困った時にはこういう支援ができるからね、とサポート体制があることを伝えましょう。次にやるべきことを決め、励ましと言葉で締められるのが望ましい終わり方です。

フォロー編

面談はコミュニケーションの場ですから、その場で終わりではなくフォローも重要です。面談で話したことが実際の現場で実施されているか様子に気を配り、うまくいっていないと言っていたことに対して支援は必要ないか、こまめに確認することで「私を見てくれている」という安心感と信頼感が生まれます。

また、面談の場で次の行動を決められなかった職員に対しては、面談後近いうちに(できれば面談時に次の約束ができると良い)考えがまとまったか確認したり再度面談の場を設けたりすることも必要です。

面談者の面談力を磨く

ポイントを押さえて面談を実施することと同時に、面談者の面談力を磨くことも大切です。
ここではすぐにできる面談力アップの方法についてご紹介します。

さらに深く学びたいと言う方は、相手に寄り添う力や傾聴力を磨きたい場合はカウンセリング、質問力や引き出す力を磨きたい場合はコーチングを学ぶことをお勧めします。

姿勢や動作
姿勢は体を相手に向けて「聴く態度」を明確に表しましょう。時々前のめりの姿勢になるのも積極的に聞いている印象を与えます。逆に、背もたれにもたれてふんぞり返ったり、頬杖をついたり、腕組みや足を組んだりするのは「真剣に聞いてもらえていない」という印象を与えるでしょう。また、貧乏ゆすりやペン回しなどをする癖がある場合も職員からすると話しづらくなります。動作はゆっくりを意識し落ち着いた態度を示しましょう。まずは自分の癖を意識することが肝要です。

視線
視線の基本は相手の目を見ることですが、見つめすぎても話しづらくなるので、顔全体に視線を向けることを意識しましょう。特に、相手が視線を外しがちな時は無理に目を合わせる必要はありません。また、「目は口ほどに物を言う」という言葉がある通り、目線だけで相手に伝わることがあります。目つきが厳しければ「私何か間違ったこと言ってるかな」と不安になったり、本当の気持ちが言いづらくなったりします。眉間に皺を寄せたり目を細めたりする癖のある方は注意しましょう。どうしてもそうなりがちな方は、口角を上げて話を聴くようにすると自然と目つきも穏やかになります。

うなずきや相づち
うなずきや相づちは、相手に話を促すのに効果的です。「あなたが話している内容を理解している」「もっとあなたの話を聞きたい」という意思表示になるため、積極的に使いましょう。そして何も考えずにうなずいたり相づちを打つのではなく、相手に与えたい印象を意識するようにします。首をゆっくり大きく動かす深いうなずきと小さく早く動かす浅いうなずきでは、印象は異なるでしょう。相手の話の内容や気持ちを考えながら聴いていると自然とうなずきにもバリエーションが出るはずです。相づちも同様です。うなずきと合わせて「うんうん」「へー」「なるほど」「そうなんですね」と声のトーンを変えながら適度に相づちを入れることで、話し手は話しやすくなります。

リアクション
リアクションがないと話し手は「私に関心がないのかな」「聞く気がないのかな」と不安になります。基本的には穏やかな表情で聴きますが、職員の話す内容に応じて少し大げさだと思えるくらいのリアクションをとりましょう。特にマスクをしている時には表情が読めないことが多いので、身振り手振りを交えたり目を見開いたりして身体を使って表すことを意識すると良いでしょう。

メモを取る
メモを取ることで、話したことをきちんと受け止めているという印象を職員に与えられます。ただし、書くことに夢中になるとリアクションや相づちが疎かになることがあるので気をつけましょう。すべてを記録する必要はないので、やると決めたことや期限を決めたこと、後から見返してフォローが必要なことを中心に簡単にメモに残しましょう。

面談を通してコミュニケーションを活性化しよう

保育園の人材育成に、面談は効果的な手段です。なぜなら、保育は成果の見えない仕事がほとんどだからです。職員一人ひとりがどう考えどう行動しているのか、それは本人に聞いてみないと本当のところは分かりません。全職員に一斉に同じことを伝えているつもりでも、一人ひとりがどう受け取りどう感じているかも分かりません。信頼関係を築く基本は相手に関心を持つことです。だからこそじっくりと話を聴く場が重要なのです。

協働することが保育の質の向上につながることを考えれば、コミュニケーションを活性化することは園全体の課題です。そのためにもまずは、1対1のコミュニケーションを深めることから取り組みましょう。

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