保育士が職場で活躍するためには、どのような能力を身につけることが必要なのか?

今回のコラムでは、保育施設における人材像について考えます。
早速ですが、保育施設における優れた人材をイメージすると、どのような姿が思い浮かぶでしょうか。

子どもの気持ちに寄り添う

子どもの主体性を引き出す

絵本の読み聞かせや手遊びが得意

保育の専門知識を身につけている

保育士は国家資格を持つ専門職ですから、プロとしてふさわしい専門性を期待したくなるのは当然です。
しかしながら、組織が職員に求める能力や現状の課題について現場の声を聞いてみると、以下のような保育の専門性に限らない内容が多いです。

◇ 体調などの自己管理ができる
◇ 時間や期限を守る
◇ 笑顔で挨拶ができる
◇ 文章力
◇ 創造力
◇ 危機管理能力
◇ 協調性
◇ リーダーシップ
◇ 周囲との円滑なコミュニケーション
◇ 主体性や積極性
◇ 感情コントロール
◇ 周囲への気配りや配慮

これはごく一部の例ですが、こうしてみると一般企業とほとんど変わりません。
目次

専門性だけでは不十分!?保育士が身につけておきたい知識や能力とは?

実際、保育の仕事を通じて必要になる能力は専門性に関わるものだけではありません。子どもだけでなく保護者と関わることが必要な仕事ですし、保育の質の向上には他の職員との連携も大切になってきますから、他者と関わり合う能力が求められます。

また、保育士として経験を積めば、後輩を指導したり、チームをまとめる立場に立つこともあるでしょう。

それだけではありません。

例えば医師の場合を想像してみてください。
他人に薦めたくなるような「良い先生」は、知識や技術といった専門性を備えていることは大前提として、患者の話をよく聴いてくれたり気持ちに寄り添うなど、専門家である前に人として信頼できる…という理由があったりするものです。

専門職は、その分野における専門的能力が重要であることは間違いありません。それは当然です。

一方で、それとは別に、その人が持つ専門的能力を周囲との関係性の中で十分に発揮するためにはヒューマンスキルが必要になるということです。

また、保育の担い手である保育士は子どもと毎日を過ごす保育環境の一部であり、人的環境の影響力という意味でも、他の専門職と比べてそれらの影響が大きいと言えます。
子どもを預ける保護者の側とすれば、専門的能力が高いのは良いけれど、それ以前に人柄が良いとか、人として信頼できることのほうが重要だと考える方が多いはずです。そのような人間的能力というものは、保育経験が長い短いでは語れないところがあるように思います。

近年では保育施設もICT化が進み、保育計画や毎日の記録もクラウドに入力したり、保護者との連絡にアプリを使うようになったりなど変化を続けています。
文章をまとめる、伝えるという目的は同じでも、手書きからパソコンに道具が変われば、使う側に求められるスキルも入れ替えが必要になります。
環境が変化すれば、仕事に求められる能力も、常識と考えていたようなことでさえも変化します。

保育士には幅広い能力が要求されている|保育の専門性だけに偏らないバランスの取れた能力開発を

保育士は専門職ですが総合職のようでもあります。善し悪しの問題は別として、実際は何でも器用にできることが求められています。しかし、それは簡単なことではありません。
一般的に保育施設では新卒として入職してからすぐに頭数としてカウントされ、基礎教育や指導を十分に受ける機会もないまま経験を重ねていきます。

これからは、専門性を高めることを第一としつつも、その専門的な能力や知識が職場でより良く発揮できるよう、コミュニケーションやマネジメント等の能力開発もバランス良く行っていく必要があるでしょう。
そのことが保育士としてだけでなく、社会人として、先輩として、チームの一員としての成長実感に繋がり、仕事をしていく上での自信にもなるはずです。

保育士が身につけたい4種類の能力

高度な専門性を身につけていても周囲と協働できないとしたら、保育の仕事では支障がでてきます。周囲の人々と協働し、チームの一員として力を発揮することが大切です。
後輩の指導や保護者との関わりではコミュニケーション能力が役に立ちます。
保育施設の職員として円滑に業務を遂行するには、実に様々な能力が要求されます。これらの能力を整理すると次のような4つのカテゴリに分けることができます。

● 専門スキル(保育の専門性に関わる能力)
● 業務スキル(日常業務遂行に必要な能力)
● マネジメント(後輩指導や管理的能力)
● マインド(仕事に対する姿勢)


4つのカテゴリにおける必要能力をさらに具体化してわかりやすくし、保育経験を積みながらバランス良く高めていけるよう組織が成長の方向性を示すこと、それがキャリアパスを示すということです。
原則として職員には仕事の経験を通じて能力を身につけてもらいますが、組織が成長をサポートするような学習機会の提供も重要になります。

以前は研修と言えば保育の研修を指す時代もありましたが、コミュニケーションやマネジメントのような分野は、日常業務の経験だけでは磨くことが難しいこともあり、外部研修などで学習機会を設けることもだいぶ増えました。
また、当然ですが新人とベテランでは求められる能力も期待値も変わります。職員の成長段階において、いま何を身につける必要があるのか、何を学ぶとより活躍できるのかを考え、職員一人一人の成長ステージに応じた成長機会を考えることが大切です。

学ぶタイミングというのはとても重要で、その人がいま直面している課題や状況に合わせたテーマを学ぶほうが、経験を通じて得られる学習がより深くなります。

名選手名コーチにあらず|重要な保育士のマネジメントスキル

「名選手、名コーチにあらず」と言われますが、保育の仕事でも、保育士として優秀なことと、良いリーダーであることはイコールではありません。後輩が成長できるように指導することやチームをまとめたりすることは、保育とは種類の違う能力なので当然です。
にもかかわらず、マネジメントを学習する機会がないまま、いきなりリーダーを任せられることが多いのが実際です。
迷いながらもリーダーとして孤軍奮闘する職員には敬意を表したいですが、できることならその立場になる前に準備運動をさせてあげたいところです。

処遇改善Ⅱにおけるキャリアアップ研修に「マネジメント」分野が設けられているように、ミドルリーダーの育成は今後の園運営における重要課題と捉えられています。
「人を育てる人」を育てないと、保育の質の向上は図れません。

実際のところ、どんなに優れた保育の考え方やメソッドを備えていても、それを実行するのは人です。力がつかないと質は担保できません。
だからこそ、保育園には新しい人材を育てられる人が必要。マネジメント力のある人が必要なのです。

とはいえキャリアアップ研修の15時間だけでマネジメントをマスターできるわけではありませんが、マネジメント分野が要件化されただけでも大きな進展でしょう。
実は、後輩指導に向きあうと、一番成長するのは後輩よりもリーダー本人。立場が人を育てると言われるように、リーダーという立場も人材育成に上手に活用したいですね。
保育士として、社会人として、チームの一員として、あなたの組織が考える「良い人材」とはどんなイメージでしょう。職場には、ロールモデルがすでにいるでしょうか。いるとしたら、なぜそう思うのでしょうか?

それぞれの保育施設に目指す保育があると思います。子どもの最善の利益のための保育を実現することについてはどの施設も同様ですが、園の理念や目標が違えば保育の個性も違うものになるはずです。
だとすると、組織が人材に求める能力や姿勢も変わってくるでしょう。共有したい価値観も異なります。
つまり、それぞれの園の「望ましい保育者像」の定義は、保育施設ごとに違います。違うからこそ、私たちの園の保育者像を共有しておく必要があるのではないでしょうか。

個々の園が理想の保育を実現するため、一人一人が園の「顔」として活躍できるように職員が成長を実感できるように、学ぶことが楽しく思える職場づくりを考えたいところです。
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