令和5年度からの研修修了要件って?|保育士のキャリアアップ研修

研修修了要件,保育士,キャリアアップ研修,令和5年度

投稿日:2022年7月13日

保育士等キャリアアップ研修とは、保育士の専門性の向上と処遇改善を目的とした専門分野の研修の総称であり、2017年(平成29年)4月から全国一斉に始まった研修制度です。

同時に降りてきた処遇改善加算Ⅱと紐づいているため、加算を受けるための研修というイメージが強いかもしれませんね。当時、経験年数概ね7年以上の保育士に月額4万円の処遇改善と大きく報道されたため、7年以上の経験がある人がみな4万円もの月給アップになるかのような誤解も生まれる事態となりました。実際には、園の職員数に合わせて加算額は違っていたため、経営者の皆さんは複雑な計算を強いられたことでしょう。

そこにこのキャリアアップ研修の研修修了要件というのがあったわけですが、同時に始まった制度のため当然その時には該当する研修は実施されていませんでした。研修のガイドラインが出ただけで、実施に関しては各都道府県で決めるよう通知されたため、行政を含めた関係者全員が手探り状態で始めたのを覚えている方も多いのではないでしょうか。だんだん制度の解釈が広がり慣れてきたことで、現在では全ての都道府県で実施されていますが、今もその都道府県独自のルールで実施されているのが実情です。姉妹園が複数都道府県をまたがる法人の園の場合は、その違いに驚きと煩わしさを感じることもあるとお聞きします。

その後、処遇改善加算Ⅱは毎年、要件の緩和や解釈の付け加え等の軽微な改正が続いてきましたが、研修修了要件についても、予想以上にキャリアアップ研修の受講が進まなかった上に新型コロナウイルスの影響が大きかったために、さらに要件の適用が遅れることとなりました。

そして、令和4年度まではこれまで同様、研修修了要件は適用しないものとし、令和5年度より段階的に適用されることが決定しました。今回は、その研修修了要件について整理してお伝えしていきます。

目次

処遇改善加算Ⅱの仕組みについて

十分知っている、という方がほとんどだとは思いますが、キャリアアップ研修の話をする上でまず触れたいのが処遇改善加算Ⅱです。こちらは細かいところが毎年変わるので令和4年現在の内容となります。

処遇改善加算Ⅱの概要

この加算は、副主任保育士・専門リーダー(月額4万円の処遇改善)、職務分野別リーダー(月額5千円の処遇改善)等を設けることにより、キャリアパスの仕組みを構築し、保育士等の処遇改善に取り組む施設・事業所に対して、 キャリアアップによる処遇改善に要する費用に係る公定価格上の加算とされています。

つまり、キャリアパスの仕組みを整えその能力や役割に応じた処遇改善を実施しましょう、実施した保育園には加算をつけます、ということです。

これまで、保育園という組織では役職といえば園長と主任のみ、という形が大多数でした。一般企業では、社長、専務、部長、課長など組織をチーム単位にして役職(ポスト)を設けるのが一般的です。これは組織が大きくなってきたら役職を設けて役割を担う人が必要だからです。保育園でも園内のすべての仕事を園長と主任だけで把握しマネジメントするのは不可能でしょう。

また、一般企業にはこの会社でどんな成長を遂げるのかを表すキャリアパスというものがあります。何年後くらいにはどんな能力を身につけてどんな仕事を任され、どんな役職についているのかを入社当初から知っているのです。それが保育業界ではほとんどありませんでした。処遇改善加算Ⅱの前に制定された処遇改善加算Ⅰではキャリアパス要件というものが定められ、保育園でもキャリアパスを構築することを推奨されています。ただしここで課題となったのは、一般企業や、同じ福祉職でも介護施設のキャリアパスが保育園に当てはまらないということです。処遇改善加算Ⅱによって半強制的に作られた役職が十分に活躍するためにも、園の人材育成の基礎となる自園独自のキャリアパスをまず整えることをお勧めします。

保育園のキャリアパスについてはこちらの記事もご覧ください。

処遇改善加算Ⅱの要件

加算額を確実に賃金改善に充てるため、賃金改善計画の策定及び実績報告を行う(処遇改善等加算Iと同様)

処遇改善の対象者が以下の基準を満たすものとなっていること

月額4万円の処遇改善の対象者 月額5千円の処遇改善の対象者
副主任保育士・専門リーダーの職位の発令

職務命令

経験年数が概ね7年以上 

4分野以上の研修を修了していること
職務分野別リーダー等の発令

職務命令 

経験年数が概ね3年以上 

担当分野の研修を修了していること

基準にある経験年数は「概ね」であり、各施設の状況を踏まえて決めることが可能とされています。つまり、7年以上じゃなければリーダー職にできないわけではありません。

「4分野以上の研修を修了していること」、「担当分野の研修を修了していること」というのがそれぞれの研修修了要件です。令和4年度まではこちらの要件は適用されません。

職務手当を含む月給により賃金改善が行われていること

月給に含まれていれば、基本給に含めなくても良いということです。多くの園で処遇改善手当もしくは役割手当としています。つまり、賞与などの一時金で支給することはできません。

職員への配分方法

  • 月額4万円又は月額5千円の加算対象人数分(園長・主任保育士等を除いた職員の概ね1/3又は1/5)を支給。
  • 副主任保育士等への配分は、実際に月額4万円の賃金改善を行う職員を1人以上確保した上で、副主任保育士等、職務分野別リーダー等に配分(月額5千円~4万円未満)。
  • 職務分野別リーダー等への配分は、加算対象人数以上確保する(月額5千円~副主任保育士等の最低額)。 
  • 法人内の他の施設の職員の賃金改善に充当可(令和4年度までの時限措置。加算額の20%の範囲内)。

制度が始まった当初は、配分の計算が複雑でしたが改正を重ねて現在は上記のようになっています。

月額4万円の処遇改善対象者は園内で1名以上いれば良いので、仮に公定価格上5名の対象者がいたとして(月額20万円分)、実際園には対象者が9名いるという場合も1名だけ月額4万円、残る8名に月額2万円ずつ処遇改善という配分も可能です。また、副主任保育士に月額4万円支給すると主任保育士の給与を超えてしまうという例があったことから、主任保育士にも月額4万円未満の支給が可能になっています。

つまり、必須の要件として定められたものを除けば処遇改善加算Ⅱは園ごとに自由に配分を決めて良いということです。ただし、今後研修修了要件を課せられますので、対象者として処遇改善を受けている職員は全員、決められた数の研修受講が必須となります。

保育士の処遇改善のイメージ,処遇改善加算Ⅱ

キャリアアップ研修の内容とは

キャリアアップ研修には8つの分野がありますが、処遇改善加算Ⅱの対象となるのは保育実践を除く7分野です。
1分野に付き15時間以上の受講が必要です。研修の対象者がリーダーなので、他の保育士への助言や指導ができる力や実践力を身につけることをねらいとしています。

キャリアアップ研修の内容,8分野

令和5年度からの研修修了要件|保育士等キャリアアップ研修

キャリアアップ研修が始まってから要件が適用されてこなかった研修修了要件ですが、ついに要件が適用されることになりました。しかし、全ての都道府県の受講状況と新型コロナウイルスの影響を考慮し、段階的に適用される形になりましたので、その内容を把握しておきましょう。

令和4年度中に4分野受講しなくてはと、焦らなくても大丈夫です。ただし、配分方法のところでお伝えした通り、配分されている職員全員に関わってくる要件ですのでご注意ください。

キャリアアップ研修,研修修了要件,副主任保育士,専門リーダー,令和5年度
キャリアアップ研修,研修修了要件,職務分野別リーダー,令和6年度

副主任保育士・専門リーダーの職員の研修要件は4分野を修了していることです。しかし令和5年度は、4分野のうち1分野修了していれば要件をクリアできます。その後、1年ごとに1分野ずつ要件が厳しくなり、令和8年度には4分野すべて修了していることが求められます。つまり、令和5年4月に副主任保育士として任命される職員は、任命される前月(令和5年3月末)までに1分野(15時間)の研修を終了する必要があるということです。専門リーダーも同様です。

厚生労働省が例として挙げる標準規模(定員90名)の保育園であれば5名が対象になるため、令和4年度中に園内で5名は1分野(15時間)の研修を修了していなくてはなりません。もし独自に専門リーダーを6名以上任命している場合は、その職員たちも令和4年度中に1分野は受講・修了しましょう。

職務分野別リーダーについては、要件適用は令和6年度からです。もう1年猶予がありますね。
厚生労働省が例として挙げる標準規模(定員90名)の保育園であれば3名が対象になるため、令和6年4月に職務分野別リーダーとして任命される3名は令和6年3月末までに研修を修了していなくてはなりません。こちらも、加算額を配分する職員が他にもいる場合はその職員たちも対象です。

この処遇改善加算Ⅱは役職や能力に応じて処遇に段階をつけることを目的としています。全職員のベースアップのためではないので、加算ⅠとⅡで調整して公平にベースアップするために使っているという園は要注意です。本当の意味での公平を言うのであれば、役割と責任を負っている職員に支給する方が納得性は高いでしょう。園の基準が曖昧・不明確だという場合は、キャリアパスという園内のものさしを作り役割を明確化することが必要です。

キャリアアップ研修関連のよくある相談

受講時間を捻出するのが難しい

ただでさえ人手不足の保育園で、1分野15時間もの時間の研修を受けるのは大変だという声が多く聞かれます。もちろん目の前の子どもたち・日々の保育は大切ですが、保育士として専門性を向上させることも大事な仕事です。研修は対象者個人のためだけでなく園全体のためになる取り組みとして、職員の意識共有を図って参加できるといいですね。

2日間や3日間にまとまっている研修もあれば日程を開けて開催する研修やオンラインでの研修など、いろいろな形で実施されているので園に合うものを探してみてはいかがでしょうか。

キャリアアップ研修以外の研修が受けられない

処遇改善加算Ⅱに関わる研修ですから、受講が最優先になるのは仕方がないことです。ただし、研修修了要件が段階的に適用されることになったため、全員が一気に受けなければならない訳ではないので、数年先までの計画を立てて効率的に受講することをお勧めします。

対象者以外の学びのために、キャリアアップ研修受講者が講師または発表者となって、学んだことを園内にアウトプットしてもらうのも良いですね。

都道府県の実施する研修の枠が少ないので隣県のキャリアアップ研修を受けたい

実際に集まって行う研修の場合は、会場の定員があるため抽選になることもあります。コロナ禍では定員が制限されさらに抽選倍率が上がったとお聞きします。そんな時、他県の研修に参加できれば助かりますよね。

ご存知の通り、キャリアアップ研修は都道府県単位で実施されています。しかし、どの都道府県で修了しても全国で効力を持ちます。ただし、園の所在する都道府県が確認し認めることが条件となっているので注意が必要です。よって、隣県のキャリアアップ研修を受ける場合には、まず自園のある都道府県へ確認をとりましょう。隣県のキャリアアップ研修で認定してもらえるかどうか、予め確認しておいた方が安心です。

また、コロナ禍を経てオンラインでの研修も増えました。eラーニングなどの教材を使っているキャリアアップ研修もあります。オンラインなら定員が大きい場合も多いので、こちらも都道府県に確認した上で有効活用することをお勧めします。

キャリアアップ研修を受けた職員が辞めてしまったり、休職したらどうなるのか

リーダーに任命するほどの職員ですから、その戦力が失われるのは園にとっては残念でなりませんね。この研修修了要件は個人のものなので、もし次の任命者が研修を修了していない場合は要件から外れることになります。保育園に限ったことではありませんが、いつ何があるかわからないので、リーダー職員は層で育成することをお勧めします。

なお、産休や育休などで現場を離れるリーダーがいた場合も、休んでいる間は任命できませんので他に任命者がいない場合は要件から外れます。

採用面接の際に処遇改善加算Ⅱを取り入れているのか質問された

一般の保育士さんでもキャリアアップ研修と処遇改善加算のことは知っている方が多く、スキルアップしたい方は特に気になる情報でしょう。現在でも、処遇改善加算Ⅱを申請していない園もあるので、養成校でも確認するように助言しているともお聞きします。申請しないことは悪いことではありませんが、処遇改善のための施策を取っているか否かは職場として選ぶための材料になるということです。このような質問があった場合、園の人材育成方針を伝える機会だと捉えてキャリアパスも含めて丁寧に説明したいですね。

また、他の園でキャリアアップ研修を受講して修了証をお持ちの人を採用することもあるでしょう。その場合はリーダーに任命して初めて効力を発揮します。

専門リーダーや職務分野別リーダーの名称はどうしたらいいのか

これまで園になかった役職ができたわけなので、任命する前に、園内で共通認識を持てる役職名と役割の定義づけを行いましょう。リーダーの名称には特に決まりはありません。研修の分野の名称を取ってつけたりキャリアパス設計の際に検討したりしている園がほとんどです。申請のためにとりあえず役職名をつけて任命した、という場合でも、そのリーダーにはどんな役割を担って欲しいのか、明確にし本人にも伝えましょう。名称よりも名ばかりになってしまうことの方が問題です。

令和5年度の要件適用に向けて準備しよう

キャリアアップ研修が始まってから5年、既に受講が進んでいるので準備はできているという園も多いでしょう。一方、要件を見直してみると特に配分のところで勘違いをしていたという園もあるのが事実です。研修修了要件は、加算分が支給されるすべての職員に関わってくるものです。

年度末になって慌てることのないよう、今のうちに園内の受講状況を確認して準備しておきましょう。

この記事の参考サイト子育て支援事業者の方向け情報
この記事の参考サイト子育て支援事業者の方向け情報

内閣府
目次