保育士の人事評価シートの作り方|評価項目の決め方から4段階評価まで【評価項目の例つき】

保育士の人事評価シートの作り方

投稿日:2026年8月27日

保育園の評価制度設計をご支援するなかで、評価シートについて私たちがよく伺うのは、次のような声です。

  • 「本部が作った全社共通の評価項目で、保育の現場に即していない」
  • 「一般の保育士も役職者も同じ項目で評価しているのは、どこか違和感がある」
  • 「評価項目に具体性がなくて、どう評価すればいいのか分からない」

評価シートは、見栄えのよい様式があれば上手くいくというものではありません。前述の声の内容はさまざまですが、原因はほぼ一つに集約されます。それは、評価項目そのものが自園の期待する職員像とつながっていないことです。

本稿は、評価シートを「作る側」である園長・人事担当・運営本部の方に向けたものです。人事評価制度の導入手順と運用の考え方は、下記の記事でお伝えしてきました。あわせてお読みください。

今回は人事評価を回すための道具である評価シートの作り方についてまとめました。


目次

評価シートの正体は「園が期待する行動のリスト」

評価シートを「書式」だと考えていると、作業は「どこかに良いひな形はないか」と探すことから始まります。「ひな形をネットで探して、そのまま使ってみた」という声も、よく伺います。しかし他園や他業種のひな形に書かれているのは、その組織が自分たちの職員に期待したことです。理念も、目指す保育も、職員の顔ぶれも違う園の期待を借りてきて、自園の職員に「これで自己評価してください」と伝えても、いまいちしっくりこないのは当然のことです。

これは他から借りてきた場合に限りません。法人内で作ったシートでも同じです。ただし、共通化そのものが問題なのではありません。複数の園を運営する法人が全園共通のシートを使うことは、同じ保育を事業とし、同じ職員像を目指しているわけですから、むしろ法人としての足並みをそろえることにつながります。

課題があるのは、保育以外の事業も営む会社・法人の場合です。介護や福祉、あるいはまったくの異業種の部門を持つ組織が、全社共通のシートを保育部門にもそのまま当てはめる。すると評価項目は、どのような職場にも当てはまる言葉、たとえば「責任感」「協調性」といった抽象的なものにならざるを得ません。子どもの育ちに寄り添う保育者の姿や、保護者支援、特色とする保育など、保育士の日々の行動は、そこに現れません。冒頭に挙げた「保育の現場に即していない」という声は、ここから生まれます。

評価シートの正体は、園が職員に期待する行動を言葉にしたリストです。様式は入れ物にすぎません。だからこそ、作り方の話は「どんな書式にするか」ではなく「自園は職員に何を期待するのか」から始まります。

なお、評価と聞くと査定のイメージが先に立ちますが、評価の第一の目的は職員の育成です。この一年で何ができるようになったかを確認し、次の成長につなげる。このことについては先ほどの「運用するポイント」のコラムで解説しています。

評価の方法には様々なやり方がありますが、代表的なものは次の3つです。

  • 「項目評価」:園が期待する行動を項目として並べ、その達成度を評価する
  • 「目標設定」:職員一人ひとりが個人目標を立て、その達成度を評価する
  • 「併用型」:項目で日常の行動を見て、目標で個別の挑戦を見る

どれが優れているという話ではありません。大事なのは、何のために評価するのかを先に決め、それに合う方法を選ぶことです。園全体で期待する行動の水準をそろえたいなら項目評価、一人ひとりの課題に応じて成長を促したいなら目標設定、その両方を見たいなら併用型。本稿は、最も多く採用されている項目評価のシートを前提に進めます。

前提|等級ごとの期待が決まっているか

評価シートは、1種類では足りません。

当然ですが、1年目の新人職員と10年目のベテランに期待することは違うからです。全職員に同じシートを配ると、若手には難しすぎ、ベテランには物足りない項目が混在し、どちらにとっても「自分事として受け取りにくい」評価シートになってしまいます。これが保育の自己評価と、人事評価の異なるところです。

そこで前提になるのが「等級」です。職員の成長段階を数段階に分け、この段階の職員にはここまでを期待する、と具体的に決めておく。評価項目は、その期待から書き起こします。

等級の考え方は、下記の記事で詳しく解説しています。

もし等級がまだ整っていないなら、評価シートより先にそちらを整えることをお勧めします。遠回りに見えますが、期待値が定まっていないまま項目づくりをすると、結局「誰に向けた項目なのか」が曖昧になり、運用で行き詰まります。

等級ごとの期待を1枚の表に整理する方法は、下記の記事で解説しています。

評価項目のつくり方|保育士に期待する能力を「行動」に翻訳する

項目の出来が、評価のしやすさと納得感を左右します。

評価項目づくりとは、目に見えない能力を、観察できる行動に翻訳する作業です。

たとえば「リーダーシップ」という項目を入れたいとします。リーダーシップがあるかどうか、見ただけで分かるでしょうか。分からないから、評価者は印象で評価することになります。評価する人によって点が変わり、本人に理由を説明できない。そうなると評価への納得感が得られません。逆に言えば、行動レベルで理由を説明できることは、納得感の土台になります。

翻訳すると、こうなります。

見えない能力行動に翻訳した評価項目の例
リーダーシップ普段から前向きな言動で、チームの雰囲気や意欲を高めている
組織理解園の理念や方針を、自分の言葉やエピソードで後輩・保護者に語っている
後輩育成後輩が困っている場面に気づき、声をかけて一緒に考えている
報告・連絡・相談判断に迷う場面で、自分の考えを添えて上司に相談している

行動レベルで具体的になっていれば、評価者は根拠を持って判断できます。本人も、どのような行動を期待されているのかが分かります。

項目案ができたら、ひとつずつ「この項目は、職員も上司も評価しやすいか」と自問してみてください。内容にもよりますが、「〜を意識している」「〜の姿勢がある」のような書き方が残っていたら、まだ直す余地があります。

もうひとつの要点が、等級による書き分けです。同じ領域・テーマでも、期待する行動の水準は等級によって変わります。たとえば「後輩育成」の領域を、等級ごとに書き分けるとこうなります。

等級のイメージ「後輩育成」の評価項目の例
全体を見て仕事をする段階クラスを越えて職員の育成状況を把握し、成長の機会を意図的に作っている
周囲の模範となる段階後輩の保育を日常的に見て、良い点と改善点をその場で言葉にして伝えている
自立して仕事ができる段階後輩から質問されたとき、自分のやり方だけでなく理由まで添えて教えている

同じ言葉の項目を全員に配るのではなく、段階ごとに行動の水準を書き分ける。ここまでできると、評価シートは等級制度とつながり、職員から見ても「次の段階で期待されること」が分かりやすいものになります。

評価項目は絞る|意識できない項目は「ない」のと同じ

項目づくりを始めると、必ず起きることがあります。それは「これも大事」「あれも外せない」と項目数が増えていくことです。

私たちが実際に目にした例では、評価項目が200に達した制度もありました。作った側の熱意はとてもよく分かります。しかし、この200項目を覚えていられる職員はいません。覚えていられない項目は、日々の行動に影響を与えないという意味で、存在しないのと同じです。

では、いくつまでならよいのか。数そのものを決めるより、次のことを基準にとして意識することが大切です。職員が日常のなかで意識していられる数かどうか、です。評価の時期になってシートを開き、そこで初めて「こんな項目があったのか」と思い出すようでは、その項目は一年間、誰の行動も変えていません。

等級ごとの期待のなかから、自園が特に重要だと考えている領域を絞り込みます。絞る作業は捨てる作業なのである意味苦しいのですが、「全てを網羅した評価シート」より「ポイントを絞り込んだ評価シート」のほうが、現場に浸透し、機能します。そぎ落とした項目は、翌年度の見直しで入れ替えればよいのです。

4段階を勧める理由|人は迷うと、真ん中につけたがる

評価する側も、人間です。

人は迷うと真ん中を選びます。中心化傾向と呼ばれる思考の癖です。真ん中につけておけば角が立たないという理由もあるでしょう。3段階や5段階のように真ん中のある尺度を使うと、評価が中央値に集まり、差のつかない結果が並びます。せっかく工夫して作成した評価項目も、これでは活きません。

このような理由から、評価の尺度について私たちが相談を受けるときには、真ん中のない4段階を勧めています。評価を付けるときに自然と上か下か、よく考えて選ぶことになるからです。

では逆に細かくすればどうなるのでしょう。仮に10段階にしたとして、「6と7の差は何ですか」と職員に聞かれて説明できるでしょうか。説明できない細かさは、むしろ曖昧さを助長します。

もうひとつ、数字だけでは評価者ごとに意味がずれます。「3」とは何ができている状態なのか、段階ごとの言葉もシートに書き込んでおくとよいでしょう。

評価者を増やし、育てる|園長一人で見られるのは5〜7人まで

マネジメントには統制範囲の原則という考え方があります。どれほど優れた管理者でも、日常的に仕事ぶりを見られるのは概ね5〜7人まで、というものです。職員が数十名の園で園長が一人で全員を評価しようとすれば、普段の仕事ぶりが見えていない人を評価することになります。見えていない人の評価は、どれほど丁寧につけても納得感につながらないでしょう。

評価の進め方の基本形は、自己評価から始まり、現場に近い評価者(主任やリーダー層)が評価し、管理者が評価し、最終的な評価を確定する流れです。評価者が複数になる分、目線合わせが重要になります。現場に近い評価者ほど具体的な行動が見えているので、上位者はその評価を参考材料にします。

現場のリーダー層に評価を分担してもらうことには、もうひとつ意味があります。後輩の成長に関心を持ち、言葉にして伝える経験そのものが、次の管理者を育てるからです。評価制度の設計は、リーダー育成の設計でもあります。

評価シートは作って終わりにしない|見直すたびに精度は上がる

最初から完璧な評価シートにはなりません。実際に運用すると、「この項目は行動として見えにくかった」「項目が多すぎた・少なすぎた」「等級のレベル感に合っていない」といった不備が必ず見つかります。それは失敗ではなく、翌年度の改善材料です。年に一度、項目を見直す前提で始めてください。

一方で、運用計画だけは最初にしっかり固めます。忙しい時期に「今回は飛ばそう」となった瞬間、職員には、この制度がその程度の位置づけであると映ります。確実に回せる回数で計画し、決めたら必ず実行する。むしろ、評価項目云々より、実行へのコミットのほうが信頼に直結します。


よくある質問

評価項目には何を入れればよいですか

多くの園で共通するのは、子どもとの関わり、保護者対応、職員同士の連携、後輩指導、自身の成長への取り組みなどの領域です。ただし、正解は園ごとに異なるものであり、自園の目指す職員像から導くことが重要です。

評価項目は、いくつくらいに絞ればよいですか

数の正解はありません。基準は、職員が日常のなかで意識していられるかどうかです。日々の行動として思い出せない項目は、あってもないのと同じです。等級ごとの期待のなかから、自園が特に重要だと考える項目に絞り込み、そぎ落とした項目は翌年度の見直しで入れ替えてください。

何段階評価がよいですか

段階評価が全てではありませんが、シンプルな数値評価なら4段階を勧めます。真ん中のある3段階・5段階は中心化傾向を招き、10段階のような細かさは段階の差を説明できなくなるためです。あわせて、各段階の言葉の意味を決めて評価者間で共有してください。

評価者がつけるコメントはどう書けばよいですか

原則は、印象ではなく事実です。具体的な行動・結果といった「事実情報」を材料に書きます。コメントと面談での伝え方は、それだけで一つのテーマになるため、別のコラムで詳しくお伝えする予定です。

自己評価と上司評価がずれたら、どうすればよいですか

評価は主観で行うものですから、ずれが生じるのは自然なことです。それは失敗なのではなく、むしろ対話の材料です。「なぜそのように感じたのか」をお互いに出し合うことで、認識がそろっていきます。面談の進め方は、下記の記事を参考にしてください。


まとめ|評価シートづくりは、期待の言語化

評価シートづくりとは、書式づくりではなく、園が職員に何を期待するかを言葉にすることです。自園はどのような保育を目指すのか。その保育を実現する職員は、どんな姿で働いているのか。そこから、等級ごとの期待を、具体的な行動に翻訳していく。そこに園の期待が表現できると、評価シートは査定の書類から育成の道具に変わります。ご自身の園の評価シートを、この観点で一度見直してみてください。

執筆:杉村基樹(株式会社ネクサス代表取締役)

目次