子どもの最善の利益のために保育園が知っておきたい|こども基本法の理解を深めよう【2023年4月施行】

投稿日:2023年4月14日

2023年4月1日に「こども家庭庁」が発足しました。それにともなって、子どもに関わる施策を行う上での考え方をまとめた法律として「こども基本法」が施行されました。保育園にとって何が変わるのかなど直接的な具体案はまだ出ておりませんが、子どもの最善の利益を考える保育園だからこそ、内容の理解を深めておく必要があります。
今回は、この「こども基本法」について保育園との関わりを考えながらわかりやすく解説します。
目次

こども基本法とは

こども基本法は令和4年6月に成立し令和5年4月施行され、日本で初めて「子どもの権利」について明記された、子どもの最善の利益を守るための法律です。施行と同じく発足した「こども家庭庁」がこれまでの省庁の枠を越えて、子どもたちのための取り組みを包括的に実行していくための基盤・根拠となる法律でもあります。
子どもたちに関わる社会問題は多岐に渡り、それを解決しようという政策も様々な分野で実行されています。社会全体でそれらをより推進していくために「こども施策」全体の共通の考え方となる基本方針を改めて制定しました。

保育園で理解したいポイント

子どもの権利条約や児童福祉法、保育所保育指針などをもとに保育実践をしている保育園や保育士にとっては、「子どもの権利」や「子どもの最善の利益」は身近なものですが、一般社会ではまだまだ認知度や意識が低いことを理解しておく必要があります。こども基本法の中心となる子どもたちに直接関わる仕事であるからこそ、子どもたちが持っている権利をよく理解し、それが守られる社会づくりに貢献することが求められます。具体的には保護者や地域に情報発信をしたり、子どもたち自身が権利を知るための教育・保育を提供したりすることが考えられます。
これを機に「私たち保育園の役割はなんだろう」「これからの時代・社会を見据えて今、園として何ができるだろう」という園の在り方について考えてみるのも良いでしょう。子どもをまんなかに、という共通の方針・目的に向かって職員と学びを深め、園内の取り組みを強化していきましょう。

制定の背景

こども基本法がつくられた背景として、少子化で子どもの総数が減少する中、児童虐待やいじめ、不登校の問題の深刻化、子どもの貧困問題など、子どもを取り巻く社会問題が危機的状況にあることが挙げられます。これらは日本における「子どもの人権」に関する意識が一般社会に浸透しておらず「子どもの最善の利益」が十分に確保されていないことが問題の一因といえます。これまでも様々な施策が取られてきていますが、この法律により生きづらさを抱える子どもたちの課題を社会全体で解決していくことを国として示した形です。

実はこれまで、日本には子どもの権利に関わる基本の法律がありませんでした。もちろん1989年に国連総会において採択された「児童の権利に関する条約(通称:子どもの権利条約)」には日本も1994年に批准(同意)しているため、こどもの権利は守られているという立場ではありましたが、国内での法律は整備されていなかったのです。日本では子どもに関わる法律は以下のようなものがあります。
スクロールできます
施行名称担当省庁内容
1947教育基本法文部科学省日本国憲法に基づいて戦後の日本の教育についての基本的な考え方や教育制度について定めた法律。 
1947児童福祉法厚生労働省児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律。
1949少年法法務省少年の健全な育成を図るため、非行少年に対する処分やその手続などについて定める法律。18,19歳も「特定少年」として適用対象になる。 
1966母子保健法厚生労働省女性や乳幼児の健康を保持増進するための法律。母子健康手帳の交付 、妊産婦・乳幼児の訪問指導、3歳児検診、養育医療の給付などが規定されている。 
2000児童虐待防止法厚生労働省正式名称は「児童虐待の防止等に関する法律」。虐待によって児童の成長や人格形成に悪影響を及ぼすことを防止するための法律。初めて児童虐待の定義が為された。 
2010子ども・若者育成支援法内閣府子ども・若者育成支援施策の総合的な推進や、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者を支援するための地域ネットワークづくりを推進する法律。 
2014子どもの貧困対策推進法内閣府貧困の状況にある子どもが、生まれ育った環境に左右されず健やかに育成される環境の整備と教育の機会均等を図るための法律。 
2017教育機会確保法文部科学省正式名称は「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」。不登校児に学校外での多様な学びの場を提供することを目的。 
2018成育基本法厚生労働省成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律。 
このように、子どもをめぐる社会課題は様々な分野で個々に法律が存在し、担当する省庁もそれぞれあります。これらの問題を根本的に解決するため、憲法や子どもの権利条約で認められる子どもの権利を包括的に定め、国の基本方針を示すことになったのが今回のこども基本法なのです。
日本財団 こども基本法WEBサイトを参考 https://kodomokihonhou.jp/about/ 

こども基本法の全体像

こども基本法は全20条で構成されています。それぞれの条文について特に保育園と関連の深いものを重点的に説明していきます。

第1条:目的

第一条 この法律は、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体と してこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする。

こども基本法は、すべての子どもの権利を尊重することを国として明記することで社会全体で子どもをめぐる課題を解決する施策を推進することを目的としています。

制定の背景にもあったように、子どもに関わる問題には他の多くの問題が複雑に絡み合っています。その問題を一つの視点や方法だけでなく様々な角度や複数の視点から総合的に考え、課題解決の糸口や道筋を見つけ出すことが根本的な問題解決につながると考えられます。
大切なのは、自分の権利を主張することがまだ難しく弱い立場に置かれがちな子どもの権利保障を中心とした法律であるということです。
ちなみに保育園での子どもの権利については「保育所保育指針」で以下のように示されています。

保育所は、子どもの人権に十分に配慮するとともに、子ども一人一人の人格を尊重して保育を行わなければならない。

保育園で理解したいポイント

保育に携わる人にとって、子どもの人権を守ることは当たり前のことであり園内でも共通認識が図られていることでしょう。保育園ではすべての職員が同じレベルで子どもの権利について理解した上で子どもの最善の利益を前提とした保育の提供が求められます。
さらに、時代や社会の変化に伴って子どもを取り巻く環境も絶えず変化しています。それはつまり「一般常識」とされていることも変わっていくということです。保育の専門家として、常に最新の知識を根拠として保育にあたることが必要不可欠です。
・こども基本法について共通理解を図る
・園の保育について子どもの権利の尊重の観点から自己評価・振り返りを行う

第2条:定義

第二条 この法律において「こども」とは、心身の発達の過程にある者をいう。 2 この法律において「こども施策」とは、次に掲げる施策その他のこどもに関する施策及び これと一体的に講ずべき施策をいう。
 一 新生児期、乳幼児期、学童期及び思春期の各段階を経て、おとなになるまでの心身の発達の過程を通じて切れ目なく行われるこどもの健やかな成長に対する支援
 二 子育てに伴う喜びを実感できる社会の実現に資するため、就労、結婚、妊娠、出産、育児等の各段階に応じて行われる支援
 三 家庭における養育環境その他のこどもの養育環境の整備

こども基本法では、18歳や20歳といった“年齢”で必要なサポートがなくならないよう、心と身体の成長の段階にある人を「こども」としています。保育園において直接関わるのは乳幼児ですが、「こども」の育ちのスタートとして将来を見据えた長期的な視点で捉える必要があります。

保育園が理解しておきたいポイント

①こどもの健やかな成長に対する支援
乳児期は人格形成の基礎を築く重要な時期です。乳幼児期の発達段階の理解を深めることはもちろん、子ども一人ひとりの発達と個性に合わせた成長支援が日々の保育に求められます。また、切れ目のない支援という観点から、小学校との連携の強化や自園の園児ではない地域の子どもの子育て支援も今後ますます重要性を増すことが予想されます。

②子育てに伴う喜びを実感できる社会実現のための支援
核家族化やひとり親家庭の増加など家庭の在り方が変容している現代では、子どもたちだけでなく、養育する親・保護者の支援が必要とされています。子どもにとって一番身近にいる大人が心身ともに安定していることが、子どもの育ちにも大きく影響します。保育は園内だけで完結するものではありません。共に子どもの幸せを考えるパートナーとして保護者・家庭と密に連携すること、保育のプロとして助言やサポートを積極的に行うことが必要となります。

③こどもの養育環境の整備
園内の保育環境を整えることはもちろん、保育園は家庭などの養育環境に目を配ることができる立場であるため、家庭環境の把握や自治体や関係機関との連携も重要な役割です。さらに環境には物的環境だけでなく人的環境も含まれるでしょう。子どもに関わる保育者がスキルアップをしてより良い保育を提供することも環境の整備に当たります。つまり保育の質の向上を目指し、子ども一人ひとりの成長にとって相応しい環境づくりをハード・ソフト両面から考えていくことが重要なのです。

第3条:基本理念

第三条 こども施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。
 二 全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。
 三 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。
 四 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。
 五 こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、こどもが心身ともに健やかに育成されるようにすること。
 六 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。

第3条では、こども施策を行う上での基本理念を掲げています。この6つの理念がこども施策を進める際の基本的な考え方となります。子どもに関わる仕事をする皆さんにとってこの内容をしっかり押さえておくことが重要です。

1〜4には「子どもの権利条約」の4原則をもとにしたこどもの権利について定められ、5と6にはこどもの養育を担う大人や社会環境について定められています。

ここで子どもの権利条約についておさらいしましょう。

子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)とは?

1989年(平成元年)11月20日に第44回国連総会において採択された、世界中のすべての子どもたちが持つ権利を定めた条約です。世界でも196の国や地域が締約しています。日本は,1990年(平成2年)9月21日にこの条約に署名しています。
条約の基本的な考え方として、次の4つの原則で表されます。子どもの権利の実現を考える場合の大前提です。

「差別のないこと(差別の禁止)」
 すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障されます。
「命を守られ成長できること(命を守られ生命、生存及び発達に対する権利)」
 すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されます。 
「意見を表明し参加できること(児童の意見の尊重)」
 子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮します。
「児童の最善の利益」
 子どもに関することが決められ、行われる時は、「その子どもにとって最もよいことは何か」を第一に考えます。

この4原則をもとに、全部で54条になる条約ですが、大きく分けると以下のような内容が定められています。

生きる権利/住む場所や食べ物があり、 医療を受けられるなど、命が守られること
育つ権利/勉強したり遊んだりして、もって生まれた能力を十分に伸ばしながら成長できること
守られる権利/紛争に巻きこまれず、難民になったら保護され、暴力や搾取、有害な労働などから守られること
参加する権利/自由に意見を表したり、団体を作ったりできること。

引用:ユニセフ こどもの権利条約 https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig.html

こども基本法の6つの基本理念と保育園

6つの基本理念のポイントを押さえて保育園に関わる部分を考えてみましょう。文言は条文よりかんたんなものをこども家庭庁より引用しております。

1 すべてのこどもは大切にされ、基本的な人権が守られ、差別されないこと。

基本的人権とは?
「人間が人間として当然持っている基本的な権利」です。思想及び良心の自由、信教の自由、学問の自由、生存権、教育を受ける権利、 勤労の権利など多くの種類の人権を基本的人権としています。憲法においても、すべての国民が個人として尊重され、生命、自由および幸福追求の権利を公共の福祉に反しない限り有することが保障されています。

つまり、子どもたちも「人が生まれながらにして持っていて誰からも侵されることのない権利」を持っており、自己主張できない場合にも周囲の大人がその権利を守りましょうということです。大人ならば自分の基本的人権を自分で守ることもできるでしょう。しかし、特に保育園が関わる「こども」は人権を知識として知っているわけではありません。だからこそ、大人がこの原則をよく理解し、子どもが子どもであるというだけで軽んじられることなく差別的な扱いを受けないよう意識することが重要です。保育園という居場所で当たり前に人権が守られ個人が尊重される経験は、乳幼児期の子どもたちにとって人格形成の基盤になることは間違いありません。

保育園でできること

子ども一人ひとりの人格を尊重しないかかわりをしていないか確認してみましょう。例えば、お迎えに来た保護者に「〇〇くんは今日トイレに失敗して後処理が大変でした」など他の人にも聞こえるように話してしまうことは、子どもの自尊心を傷つけてしまう可能性があります。保護者の気持ちにも配慮し対応することが必要です。
差別についても、どのような言動が差別にあたる可能性があるのか、改めて園内で整理することも重要です。多様化の進む現代では、自分の固定観念を疑い認識を改めることが必要となる場合が増えています。自分にそのつもりはなくても相手は傷ついている、ということもあるものです。自分の気持ちをうまく表現できない子どもたちを相手にする保育者という立場だからこそ、細心の注意を払う必要があるでしょう。


2 すべてのこどもは、大事に育てられ、生活が守られ、愛され、保護される権利が守られ、平等に教育を受けられること。

こどもの健やかな成長を支えることが定められています。

保育園でできること

保育所保育指針において「保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことを特性とし、その内容については厚生労働大臣が定める指針に従う」とされています。子どもの健康や安全維持の向上に努めることはもちろんのこと、乳幼児期にふさわしい経験や学びが積み重ねられるように援助することが必要です。教育においても認定こども園や幼稚園との共有化を図り発達の特性を考えながら実施されています。


3 年齢や発達の程度により、自分に直接関係することに意見を言えたり、社会のさまざまな活動に参加できること。

こども自身に直接関係する全ての事項に関して、年齢や発達の程度に応じて、こどもの意見を表明する機会と多様な社会的活動に参画する機会が確保されることを規定しています。 

保育園でできること

未就学児のため発達の段階を考えると決定権は親にあると考えられますが、卒園後にどの学校に行くのかなどの子どもに直接影響のある事柄については本人の意見を考慮する必要があるでしょう。
また、社会的活動に参画する機会として園で地域のボランティアに参加するなどの多様な経験をする機会を設けることができるでしょう。


4 すべてのこどもは年齢や発達の程度に応じて、意見が尊重され、こどもの今とこれからにとって最もよいことが優先して考えられること。

こども自身に直接関係する事項以外の事項であっても、こどもの意見が、 その年齢及び発達の程度に応じて尊重され、その最善の利益が優先して考慮されることが規定されています。

保育園でできること

子どもの最善の利益について園内でも話し合わせていると思います。子どもたちにもより噛み砕いたやさしい内容で「自分たちにとって良いこと」を話し合う機会を設けることもよいでしょう。最善の利益だけでなくても話し合う機会を設けることで意見がでなかったとしても今後自分たちの意見を表明するための練習になります。大人とは違った視点での意見が出てくるかもしれません。


5 子育ては家庭を基本としながら、そのサポートが十分に行われ、家庭で育つことが難しいこどもも、家庭と同様の環境が確保されること。

保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、子育てに対して社会全体として 十分な支援を行うことを定めたものです。また、家庭での養育が困難なこどもに 対して、その健やかな成長のために同様の養育環境を確保することを定めています。

保育園でできること

子育て支援にあたる内容です。保育所の保育指針では、各地域や家庭の状況を踏まえて相互の信頼関係を基本に保護者の意見を尊重するよう保育所の特性を活かした支援について記載されています。こどもを中心として日常的に保護者と関わる機会の多い保育園だからこそ子育て支援も重要になってきます。家庭での療育に関して相談や不適切な兆候が見られる場合には、他機関と連携して対応することが必要です。


6 家庭や子育てに夢を持ち、喜びを感じられる社会をつくること。

子育てをする者、しようとする者が、家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できるよう、社会環境を整備することを示したものです。

保育園でできること

保護者に向けての支援のひとつになりますが、一緒に子育てを行っているという安心感を持ち、子育ての喜びもともに実感できるように関わります。専門性をもっている保育士から接し方を伝えることや、保育活動へ積極的な参加を促すことで保護者自身が子育てへの有能感をもつこともあります。保護者の状況に配慮する必要はありますが、機会を提供することは必要です。

第4~7条:責務等

第四条 国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、こども施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。(地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、こども施策に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内におけるこどもの状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。(事業主の努力)

第六条 事業主は、基本理念にのっとり、その雇用する労働者の職業生活及び家庭生活の充実が図られるよう、必要な雇用環境の整備に努めるものとする。(国民の努力)

第七条 国民は、基本理念にのっとり、こども施策について関心と理解を深めるとともに、国又は地方公共団体が実施するこども施策に協力するよう努めるものとする。

4〜7条では、国・地方公共団体・事業主・国民それぞれが基本理念にのっとって担う責務について記載してあります。かんたんに記すと以下のようになります。
/子ども施策を策定し実施する
地方公共団体/子ども施策に関して連携しつつ策定実施する
事業主/雇用する労働者の生活の充実が図られるよう雇用環境の整備に努める
国民/こども施策への関心と理解を深め、こども施策に協力するよう努める
 
保育園では、こども施策の実施の拠点になる可能性もあります。
また、事業主として職員の雇用環境を整備する必要もあります。職員にこども施策への理解を深めるよう呼びかける必要も出てくるでしょう。

第8条:年次報告

第八条 政府は、毎年、国会に、我が国におけるこどもをめぐる状況及び政府が講じたこども施策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。

2 前項の報告は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。
 一 少子化社会対策基本法(平成十五年法律第百三十三号)第九条第一項に規定する少子化の状況及び少子化に対処するために講じた施策の概況
 二 子ども・若者育成支援推進法(平成二十一年法律第七十一号)第六条第一項に規定する我が国における子ども・若者の状況及び政府が講じた子ども・若者育成支援施策の実施の状況
 三 子どもの貧困対策の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十四号)第七条第一項に規定する子どもの貧困の状況及び子どもの貧困対策の実施の状況

第8条での年次報告は、政府がこどもをめぐる状況や施策の報告をし公表する、という旨が示されています。政府の義務ですのでここは保育施設にとくに関係する部分はありません。

第9条:こども大綱

第九条 政府は、こども施策を総合的に推進するため、こども施策に関する大綱(以下「こども大綱」という。)を定めなければならない。

2 こども大綱は、次に掲げる事項について定めるものとする。
 一 こども施策に関する基本的な方針
 二 こども施策に関する重要事項
 三 前二号に掲げるもののほか、こども施策を推進するために必要な事項

3 こども大綱は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。
一 少子化社会対策基本法第七条第一項に規定する総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策
 二 子ども・若者育成支援推進法第八条第二項各号に掲げる事項
 三 子どもの貧困対策の推進に関する法律第八条第二項各号に掲げる事項

4 こども大綱に定めるこども施策については、原則として、当該こども施策の具体的な目標 及びその達成の期間を定めるものとする。
5 内閣総理大臣は、こども大綱の案につき閣議の決定を求めなければならない。
6・7 (略)

第9条ではこども大綱(こども施策に関する大綱)についてです。こども大綱というのは、こども施策についての基本的な方針などが書かれます。長期的な少子化対策のための事項や子どもや若者の支援に関する内容、子どもの貧困に関する内容などの施策について記載されます。もともと別々に作られてきた3つの大綱(「少子化社 会対策大綱」・「子供・若者育成支援推進大綱」・「子供の貧困対策に関する大綱」 )を一つに束ねるようになります。これにより政府での統一を図って施策を進めていくことができるようになります。

第10条:こども計画

第十条 都道府県は、こども大綱を勘案して、当該都道府県におけるこども施策についての計画(以下この条において「都道府県こども計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 市町村は、こども大綱(都道府県こども計画が定められているときは、こども大綱及び都道府県こども計画)を勘案して、当該市町村におけるこども施策についての計画(以下この条において「市町村こども計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
3 都道府県又は市町村は、都道府県こども計画又は市町村こども計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 都道府県こども計画は、子ども・若者育成支援推進法第九条第一項に規定する都道府県子ども・若者計画、子どもの貧困対策の推進に関する法律第九条第一項に規定する都道府県計画その他法令の規定により都道府県が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。
5 市町村こども計画は、子ども・若者育成支援推進法第九条第二項に規定する市町村子ども・若者計画、子どもの貧困対策の推進に関する法律第九条第二項に規定する市町村計画その他法令の規定により市町村が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。

都道府県では、こども大綱を考慮して都道府県こども計画を定めるように努めます。
市町村では、こども大綱と都道府県こども計画をもとに市町村こども計画を定めるように努めます。このような計画にのっとり子ども施策を進めていくようになるでしょう。

第11条:こども等の意見の反映

第十一条 国及び地方公共団体は、こども施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども又はこどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

第11条ではこどもの意見の反映について記載されています。こども施策の策定実施、評価を行うにあたってこどもや関係者の意見を反映させることを示しています。国や地方公共団体だけで決めていくのではなくて、広く関係者の意見を募り反映させてこどもの視点に立って具体的な施策が進められるようになります。
 
意見を募る方法としては、たとえば下記のような方法が考えられています。
・こどもや若者を対象としたパブリックコメント(意見公募)の実施。
・ 審議会・懇談会等の委員等へのこどもや若者の参画の促進。
・ こどもや若者にとって身近なSNSを活用した意見聴取などこどもや若者から直接意見を聴く仕組みや場づくり。
保育園の関連は薄いですが、このようにこどもの意見を反映した施策が進められるということは認識しておくとよいと思います。

第12条:体制整備

第十二条 国は、こども施策に係る支援が、支援を必要とする事由、支援を行う関係機関、支援の対象となる者の年齢又は居住する地域等にかかわらず、切れ目なく行われるようにするため、当該支援を総合的かつ一体的に行う体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

こども施策ではこれまで、年齢ごとや施策ごと、関係省庁ごとに隔たりがありました。この隔たりをなくし、支援の対象となる人が切れ目なく支援を受けることができるように体制を整備していきます。

第13~14条:連携の確保等

第十三条 国は、こども施策が適正かつ円滑に行われるよう、医療、保健、福祉、教育、療育等に関する業務を行う関係機関相互の有機的な連携の確保に努めなければならない。
2 都道府県及び市町村は、こども施策が適正かつ円滑に行われるよう、前項に規定する業務を行う関係機関及び地域においてこどもに関する支援を行う民間団体相互の有機的な連携の確保に努めなければならない。
3 都道府県又は市町村は、前項の有機的な連携の確保に資するため、こども施策に係る事務の実施に係る協議及び連絡調整を行うための協議会を組織することができる。
4 前項の協議会は、第二項の関係機関及び民間団体その他の都道府県又は市町村が必要と認める者をもって構成する。

第十四条 国は、前条第一項の有機的な連携の確保に資するため、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、同項の関係機関が行うこどもに関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用その他の必要な措置を講ずるものとする。 2 都道府県及び市町村は、前条第二項の有機的な連携の確保に資するため、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、同項の関係機関及び民間団体が行うこどもに関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

13,14条では、関係者の連携について示されています。医療、保険、福祉、教育、療育など様々な機関とのより有機的な連携が図られるようになります。
保育園でも地域や小学校、児童館などのほか関係機関との連携が図られるようになってきました。より一体的になるよう今後は施策がすすむ可能性があります。
 そして、連携を図る上で、個人情報の適切な取り扱いについても示されています。連携とは少し違っていますが、保育園での個人情報の取り扱いについてはこちらのネクサスコラムでも記載していますのでご覧ください。

第15条:周知

第十五条 国は、この法律及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものとする。

15条では国が国民への周知について明記されています。保育園でも職員や保護者などに広く知らせ理解を深めてもらうことは大切です。

第16条:財政上の措置

第十六条 政府は、こども大綱の定めるところにより、こども施策の幅広い展開その他のこども施策の一層の充実を図るとともに、その実施に必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

16条では財政上の措置について明記されています。

第17~20条:こども政策推進会議

第十七条 こども家庭庁に、特別の機関として、こども政策推進会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 こども大綱の案を作成すること。
 二 前号に掲げるもののほか、こども施策に関する重要事項について審議し、及びこども施策の実施を推進すること。
 三 こども施策について必要な関係行政機関相互の調整をすること。
 四 前三号に掲げるもののほか、他の法令の規定により会議に属させられた事務
3 会議は、前項の規定によりこども大綱の案を作成するに当たり、こども及びこどもを養育する者、学識経験者、地域においてこどもに関する支援を行う民間団体その他の関係者の意見を反映させるために必要な措 置を講ずるものとする。(組織等)

第十八条 会議は、会長及び委員をもって組織する。
2 会長は、内閣総理大臣をもって充てる。
3 委員は、次に掲げる者をもって充てる。
 一 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第九条第一項に規定する特命担当大臣であって、同項の規定により命を受けて同法第十一条の三に規定する事務を掌理するもの
 二 会長及び前号に掲げる者以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者

第十九条・第二十条 (略)

17〜20条では、こども政策推進会議がこども家庭庁と別機関として置かれることが示されています。
こども政策推進会議では、こども大綱案が作成されます。会長には内閣総理大臣があたり中心になって会議を進められます。

保育園へのこども基本法の影響

常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関連するすべての制度で実現することを述べたこども基本法。これを受けて、保育制度にも影響がでてくる可能性がありますが、まだ検討段階であり保育現場に降りてくるのはもう少し先のことになるでしょう。ただ、こども家庭庁の発足もありこども施策は社会から注目されているので「何も変わらないということはない」と考えられます。変化に対応できるよう準備はしておきたいものです。

親のための保育から子どものための保育に、と言われていますが、園内ではもちろん子どものための保育が為されていることと思います。しかし時には保育園でも判断軸が「職員が楽になるから」「保護者が喜ぶから」という大人目線の理由になることもあるかもしれません。それらが悪いというわけではありませんが、子どもにとってはどうなんだろう、と一度視点を変えられるより良いのではないでしょうか。
そういう意味では制度はやはり大人向けになっていることも多く、当事者である子どもを置き去りにしない「こどもまんなか」な制度改革が期待されます。子どもの最善の利益を考える保育園だからこそ、今後の制度の動向を注視し最新情報をいち早くキャッチできるようにしておきましょう。

この記事の参考サイト

ユニセフ こどもの権利条約 
こども基本法-こども家庭庁 
こども基本法説明資料-内閣官房こども家庭庁設立準備室
日本財団 こども基本法WEBサイト 
保育所保育指針解説-厚生労働省
目次